2006-01-01から1年間の記事一覧

金木犀

[風を感じ、ときを想う日記](40)10/4 金木犀 今年は、金木犀が2度も咲いた。1週間前に盛りを過ぎ、花の命のはかなさを嘆いていると、2、3日前からまたあの香りが漂いだした。なにかの勘違いだろうと思っていたら、今日はそこらじゅうが金木犀で埋…

不整脈

[エッセイ 148](新作) 不整脈 ある朝、起きようとしたら、ミゾオチのあたりがヒクついて気分も優れなかった。何気なく脈を診たら、ひどく乱れていた。びっくりして、近所の内科医院に助けを求めた。私がまだ30歳代前半のころのことである。 その前日…

中秋の名月

[エッセイ 74](既発表 2年前の作品) 中秋の名月 今年は、9月28日がその日に当たった。夕食後東の空を見上げると、透きとおった満月が大きな顔をして鎮座していた。これぞ中秋の名月である。台風一過のその翌々日、立待月はさらに透明度を増して中空…

キンモクセイ

[エッセイ 147](新作) キンモクセイ 住宅街を散策していると、どこからともなく甘い香りが漂ってくる。中国では、七里香や九里香などと呼ぶこともあるそうだが、そのほのかな香りは少し離れたところのほうが鼻孔に心地よい。高浜虚子は、その間合いを「…

彼岸花

[エッセイ 35](既発表 3年前の作品) 彼岸花 ちょうど、彼岸から10月の初めごろまで、田や畑の畦道に赤い花が目を引くようになる。「赤い花なら曼珠沙華、オランダ屋敷に雨が降る・・・」子供のころ流行った歌をいやがうえにも思い出す。 題名はなんと…

高(こう)さん

[エッセイ 72](既発表 2年前の作品) 高(こう)さん 北京空港での入国手続きが終わったとき、現地時間は午後の2時に近かった。到着ロビーでは、出迎えの現地旅行社の係員が待っていてくれた。彼は日本語も上手、他の客も交えて雑談をしているうちにワ…

敬老の日

[風を感じ、ときを想う日記](39)9/19 敬老の日 昨日は、台風の余波で昼過ぎまですっきりしない天気が続いた。とりたてて予定もないので、敬老の日の集いを覗いてみることにした。場所は、歩いて15分くらいのところにある老人福祉センターである。…

高野槇

[エッセイ 146](新作) 高野槇 今日は、駅前のスーパーに目玉商品の安いのがあるというので、散歩がてら夫婦でそちらに出かけてみることにした。途中、農家の庭先で、直売品の陳列作業をしているところに出くわした。見ると、大根の摘み菜が山積みされて…

優勝フィーバー

[エッセイ 31](既発表 3年前の作品) 優勝フィーバー やっと、阪神のリーグ優勝が決まった。通信社の記事は、そのときの大坂・道頓堀の様子を次のように伝えている。 道頓堀が「狂喜の街」と化した。阪神タイガースの18年ぶりの優勝が決まった15日夜…

重陽の節句

[エッセイ 145](新作) 重陽の節句 もう四半世紀もむかしの話になるが、現在の土地に引っ越してきたとき、電話番号も新しいものに変わった。電話局から告げられた新番号は9442であった。これでは、「苦しい・死に」ではないですかと抗議し、かろうじ…

米・同時テロ

[風を感じ、ときを想う日記](38)9/11 米・同時テロ 「お父さん、あの世界貿易センターに飛行機がぶつかったそうよ」。風呂から上がってきたばかりの私に、テレビのニュース速報を見て家内が叫んだ。 2ヵ月半前にそこを訪れたばかりであったので、特…

とりあえず ビール!

[エッセイ 30](既発表 3年前の作品) とりあえず ビール! 9月になって、やっと夏らしい日が続くようになった。「この夏一番」という暑さについての記録は、9月に入ってからのものがほとんどである。それでも、どこか好ましい暑さである。日本特有の蒸…

カブトムシ

[エッセイ 144](新作) カブトムシ 長い夏休みもとうとう終わってしまった。休みの間、子供達を楽しませてくれたカブトムシたちも、最期のときを迎えようとしている。 カブトムシといえば、長男が小学生のころ、1年近くにわたって彼らの面倒をみたこと…

[エッセイ 70](既発表 2年前の作品) 蝉 わが家でも、セミの抜け殻が庭木いっぱいにしがみついている。あたりがすっかり暗くなったころ、庭ではアブラゼミの羽化が始まった。カメラのフラッシュに動じることもない。一説では7年もの間地中で成長を続け…

ニューヨークこぼれ話(6)「ロウアー・マンハッタン」

[エッセイ 143](新作) ニューヨークこぼれ話(6)「ロウアー・マンハッタン」 ニューヨークを代表する風景といえば、ブルックリン橋の袂からイースト川越しに見るロウアー・マンハッタンの摩天楼群、そして海に浮ぶ巨大なブロンズ像、自由の女神である…

ニューヨークこぼれ話(5)「ミッドタウン」

[エッセイ 142] (新作) ニューヨークこぼれ話(5)「ミッドタウン」 ニューヨークといえば摩天楼。ここミッドタウンには、世界的にも有名な超高層ビルがひしめき合っている。マンハッタンを東から西にむけて横断しながら、代表的な4つのビルを訪ねて…

ニューヨークこぼれ話(4)「アップタウン」

[エッセイ 141] (新作) ニューヨークこぼれ話(4)「アップタウン」 マンハッタン、とくにアップタウンは、セントラルパークを抜きにしては語れない。そこまで出かけたら、メトロポリタン美術館に立ち寄らない手はない。その近くに、高級ブランド品店…

花火大会

[風を感じ、ときを想う日記](37)8/3 花火大会 一昨日になるが、江ノ島の花火大会を見物に出かけた。午後7時15分に始まり、8時15分までの1時間、ぶっ通しで上げるという。用意された玉は5000発。一番大きい目玉は二尺玉が2発だそうだ。お天…

花火大会(エッセイ)

[エッセイ 25](既発表 3年前の作品) 花火大会 その日は、朝からなんとなく落ち着かなかった。家内は、夕方のお天気を気にしながら、夕食の準備はどうしたものかと問いかけてきた。 先日、家内と江ノ島の花火大会を見に行った。子供が小さいころ一度行った…

ニューヨークこぼれ話(3)「地下鉄」

[エッセイ 140] (新作) ニューヨークこぼれ話(3)「地下鉄」 私たち夫婦は、タイムズ・スクエアからワールド・トレーディング・センター跡地に向かおうとしていた。地下鉄の路線図をみると、E路線で7つ目であった。最寄りの42ST駅まではちょっと距…

ニューヨークこぼれ話(2) 「アメリカ・空の旅」

[エッセイ 139] (新作) ニューヨークこぼれ話(2)「アメリカ・空の旅」 アメリカの乗客は、謙譲の美徳を発揮してきちんと秩序を守っている。そういって、家内はしきりに感心していた。飛行機が到着したとき、前の人から譲りあいながら順序よく降りて…

ニューヨークこぼれ話(1) 「トイレ」

[エッセイ 138] (新作) ニューヨークこぼれ話(1)「トイレ」 マイアミからキー・ウェストに向かうバスの便を予約するとき、一番心配したのはトイレのことである。全行程4時間半かかるという。はたして、途中で休憩はあるのだろうか。バスにトイレは…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑰(6/9~10)「帰国」

[エッセイ 137](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑰「帰国」 空港には、お嫁さんと二人の孫娘が見送りにきてくれた。息子とは、今朝出勤のとき互いに挨拶を済ませていた。またすぐ日本で会えるといいつつも、さすがにつらい別れであった。 今回の旅…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑯(6/8)「グラジュエイション」

[エッセイ 136](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑯(6/8)「グラジュエイション」 息子は今日、子供と親のために休暇をとってくれた。 上の孫娘は、今日がナーサリースクールのグラジュエイション(卒業式:Graduation)である。まずは、聖堂で牧…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑮(6/7)「オペラ・ハウス」

[エッセイ 135](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑮(6/7)「オペラ・ハウス」 12時の鐘が鳴り出したとたん、その美しい娘は慌てて走り去っていった。あとには、ガラスの靴が片方だけ残されていた。すっかりその娘のとりこになった王子は、靴…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑭(6/6)「休養」

[エッセイ 134](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑭(6/6)「休養」 成田を発ってマル2週間、さすがに疲れが出てきたようだ。今日はマンションでゆっくり過ごすことにした。 このマンション、実は築86年だそうだ。なるほど、外壁の最上部に、…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑬(6/5)「カーネギーホール」

[エッセイ 133](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑬(6/5)「カーネギーホール」 もう、クラシック音楽のシーズンは終わっていた。それでも、なんとか両親にカーネギーホールでクラシックを聞かせようと、息子はあれこれ奔走してくれた。その結…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑫(6/4)「キー・ウェスト」

[エッセイ 132](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑫(6/4)「キー・ウェスト」 一人の老漁師がいた。これまで一匹の魚も釣れない日が84日間も続いていた。85日目に、老人はまだ行ったことのない遠い海に漕ぎ出していった。昼ごろ、一匹の巨…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑪(6/3)「セブンマイル・ブリッジ」

[エッセイ 131](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑪(6/3)「セブンマイル・ブリッジ」 海に浮んだ白い橋がはるか彼方へと伸びている。その先は、水平線に吸い込まれなにも確認できない。見えるのは、抜けるような青空とブルーに輝く海との境界…

ニューヨーク・普通の生活の日記⑩(6/2)「アール・デコ」

[エッセイ 130](新作) ニューヨーク・普通の生活の日記⑩(6/2)「アール・デコ」 ホテルでもらった「Visitor’s Map」という観光地図の片隅に、マンハッタンのそれが刷り込まれていた。マイアミ地域全体の地図をはじめ、ビーチやダウンタウンの拡大図…