昭和ノスタルジア

[エッセイ 683]

昭和ノスタルジア

 

 4月29日の休日は、もとは天長節(1927~1947)といわれていたが、戦後、天皇誕生日(1948~1988)と改称された。そして、平成の世になって、天皇誕生日は12月23日へと移されたが、この日を休日として残すため、みどりの日(1989~2006)と改称され新たな休日とされた。さらに後年、5月4日を休日としてみどりの日とすることになり、4月29日は昭和の日と再改称して休日として残されることになった。かくして、昭和天皇の誕生日だった4月29日は、休日・昭和の日(2007~)として当時を懐かしむ日となったわけである。

 

 その昭和の日は、日本の歴史上もっとも変化に富んだ時期を振り返る日でもある。明治維新で開国を果たしたわが国は、まだ極東の小国でしかなかった。それが、半世紀を過ぎる頃には世界の列強の一つへとのしあがってきた。しかし、野望が過ぎたためだろうか、周辺国との軋轢と太平洋戦争の敗戦によって多くのものを失うことになる。その後は、戦後の混乱から立ち上がりみごと復興を成し遂げ、高度成長を経てついには世界第二の経済大国へと上り詰めていく。

 

 いまの中高年は、その昭和の最盛期を実体験した人たちである。昭和の日は、あの夢にあふれた時代を振り返り、「あの頃はよかった!」とノスタルジアに浸る日なのかもしれない。しかし、もはやあのよき時代は戻ってこない。せいぜい、あの頃の歌謡曲を聴いて満足するしかない。そこで、「昭和」のついた歌をネットで検索してみた。JOYSOUNDのページには215曲が羅列されていた。

 

 参考までに、その最初の方の20曲を無作為に羅列してみることにした。昭和かたぎ(天童よしみ)、居酒屋「昭和」(八代亜紀)、昭和枯れすすき(さくらと一郎)、昭和も遠くなりました(水田かおり)、昭和・平成・令和を生きる(森進一)、遠き昭和の(小林旭)、昭和流れうた(森進一)、遠き昭和(五木ひろし)、昭和の花(小金沢昇司)、昭和ブルース(天知茂)、ここまでで10曲である。

 

 つづいて、昭和の歌など聴きながら(八代亜紀)、昭和の背中(吉幾三)、昭和の最後の秋のこと(桂銀淑)、昭和のたずねびと(石原裕次郎)、昭和北前船(鳥羽一郎)、昭和放浪記(大川栄策)、昭和時次郎(渥美清)、昭和・露地裏話(小林旭)、昭和縄のれん(走裕介)、そして20曲目は昭和(長渕剛)だった。

 

 “歌は世につれ世はうたにつれ”というが、昭和という名の付く歌がこんなにもたくさんあるということはそれだけその時代がいまも注目されているということである。それらの歌を実際に聴いてみようと思えば、その大半はネットで聞くことができるはずである。それだけで飽き足らなければ、カラオケ屋にいって実際に歌ってみればさらに満足度も増すかもしれない。そうした昭和ノスタルジアを、これからの生活にプラスに活かしていきたいものである。

                      (2024年4月30日 藤原吉弘)