ニューヨークこぼれ話(5)「ミッドタウン」

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[エッセイ 142] (新作)
ニューヨークこぼれ話(5)「ミッドタウン」

 ニューヨークといえば摩天楼。ここミッドタウンには、世界的にも有名な超高層ビルがひしめき合っている。マンハッタンを東から西にむけて横断しながら、代表的な4つのビルを訪ねてみることにした。

 一番東側、イースト川と1番街に挟まれて威容を誇るのが国連ビルである。第2次世界大戦直後に発足した国連は、イースト川沿いの沼地を整備して本部を構えた。全4棟のうち、一番高い39階建てのビルが事務局ビルである。

 前回訪問した時は、重要な会議があるとかで入場させてもらえなかったが、平時は7、5ドル、ガイド付きでも10、5ドルで入れるそうだ。今も絶えない国際的な緊張状態を、直接肌で感じ取ることができれば大きな収穫である。

 カメラアングルは1番街の北側がおすすめ、地下鉄は10分ばかり歩くようになるが、4、5、6、7、S各ラインの42St.-Grand Centralが最寄駅である。

 42ストリートを西に向かって引き返えすと、グランド・セントラル駅の直前右側にクライスラービルがある。その名前のとおり、自動車メーカーの本社があったビルである。

 77階建て、318メートル。1930年の完成当時は、世界一の高さであったそうだ。アール・デコ調の金属製の尖塔は、今もニューヨークの空に燦然と輝いている。一般の観光客は中に入れてもらえないのが残念である。

 グランド・セントラル駅の北側に隣接し、駅舎とともにパーク街を塞いでいるのがメット・ライフビルである。「ウルトラ・クイズ」の決勝の場となったと聞けば、ああ、あのパンナムビルかと思い当たる人も多いはずである。

 クライスラーはベンツに吸収され、パンナムはその面影すらなくなってしまった。「つわものどもの夢の跡」を目の当たりにして、栄枯盛衰の厳しさをあらためて思い知らされる。

 真打は、なんといってもエムパイア・ステートビルである。102階建て、381メートルの雄姿は、1931年の完成以来、長い間高さ世界一の座を守り続けてきた。キング・コングをはじめ数々の映画の舞台になるなど、私たちにはもっともなじみの深いビルである。

 前回は、W・T・Cの展望台に上がった直後であったためロビーの見学にとどめたが、その豪華さには目をみはらされた。こんな巨大な超高層ビルが、70年も前にわずか1年余りでつくり上げられたというのもまた驚きであった。地下鉄は、B、D、F、N、O、R、V、W各ラインの34St.-Herald Sq.が最寄駅である。

 マンハッタンは、アメリカの文化と富が凝縮されて詰め込まれた場所である。摩天楼は、その造形物の象徴であるということができる。
(2006年8月19日)

[写真、上は近所に咲いた百日紅さるすべり)、
    下はミッドタウン、ブロード・ウェイの一角にあるオペラ座の怪人を上演中の劇場]