ニューヨーク・普通の生活の日記⑫(6/4)「キー・ウェスト」

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[エッセイ 132](新作)
ニューヨーク・普通の生活の日記⑫(6/4)「キー・ウェスト」

 一人の老漁師がいた。これまで一匹の魚も釣れない日が84日間も続いていた。85日目に、老人はまだ行ったことのない遠い海に漕ぎ出していった。昼ごろ、一匹の巨大なカジキマグロが針にかかった。老人とカジキは3昼夜にわたって闘いつづける。老人はついにカジキに銛を打ち込み闘いは終わった。

 老人は、その巨大なカジキを自分の小さな舟にくくりつけ帰途につく。その途中、今度は鮫たちがそのカジキをつぎつぎと襲ってくる。せっかくのカジキは頭と骨だけの屍となり、老人は疲労困憊のすえやっと港に帰り着いた。

 40年以上も前、こんな映画を観たことがある。ヘミングウェイの「老人と海」である。いま、目の前にあるその小説の最後は、「老人はライオンの夢を見ていた」で終わっている。
 
 この物語は、キー・ウェストとは目と鼻の先にあたるカリブ海が舞台である。作者のヘミングウェイは、2度目の妻とこのキー・ウェストで8年間を過ごした。その家は、いまは私設博物館「へミングウェイの家」となり観光スポットとしてにぎわっている。

 東側の大西洋と西側のメキシコ湾を分ける岬には、アメリカの南のはてを示す「サザンモスト・ポイント(Southernmost Point)」という大きな標識が建てられている。全長約6キロ、幅約3キロというこの小さな島は、全体が一つの市街地を形成していた。

 ところで、その島一番の繁華街といわれているデュバル通り(Duval St.)は、人通りも多く土産物店は結構繁盛していた。あちこちにみられるオイスター・バーは、ほとんどの店で生のバンド演奏を取り入れ、昼間から大変な賑わいを見せている。それほどとも思えないような観光施設でも、そこそこの人だかりができていた。マリンスポーツなどの大型レジャーになじめない観光客が、いわばあぶれた形で街にたむろしているのではなかろうか。

 フロリダ・キーズは、私たちに多くの美しい思い出を残してくれた。しかし、
昼間からアルコール類に親しむことには抵抗を感じ、マリンスポーツを得意としない私たちにとって、このキー・ウェストはただ暑いばかりの退屈な場所でもあった。

帰りのマイアミ空港での夕食は、ピザとサラダを1人前ずつ買って2人で半分ずつ食べた。久しぶりに満足いくだけの野菜にありついた感じがする。

この国では、ファーストフード店はいつも目の前にあるが、量は多すぎ野菜は少なすぎる。子息など、すっかり大食漢になったと嘆いていた。あと数日、「(ハンバーガー+サラダ)÷2」の図式で乗り切っていくつもりである。

[写真、上はへミングウェイの家
    下はキー・ウェストのヨットハーバー]