初詣ツアー

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[エッセイ 334]
初詣ツアー

 あの大震災以来、社会における“絆”の重要性が再認識されるようになった。私の場合は、ドーナツ型だった友人関係をアンパン型に進化させ、さらにはその中身を充実させようと、昨春からご近所での友達づくりに精を出している。そのため、町内の行事にはできるだけ多く参加するようつとめている。

 今回は、老人会で企画した初詣のバスツアーに参加し、同世代の人たちといっしょに日帰りの旅を楽しむことにした。私たちの目的地は、三嶋大社伊豆半島の付け根周辺である。バスは、雪の残る箱根新道を快調に上って行った。すでに1時間以上が経過し、車内はすっかり打ち解けた雰囲気になっていた。

 松の内を過ぎたというのに、三嶋大社の駐車場は観光バスで満杯だった。不安な世相を反映しての現象だろうか。あるいは、平和だから物見遊山に団体で押しかけたのだろうか。やっとたどり着いた賽銭箱の前では、後ろに続く人たちのことを考えて、願い事は「家内安全」だけにしておいた。

 あとで調べてみたら、この三嶋大社というのは大変格式の高い神社だった。社格は、延喜式内社(名神大社)、官幣大社、そして伊豆国の一宮であり総社なのだそうだ。意味はほとんど理解できないが、関東、東海一円でもトップクラスの格をもつ神社らしい。これだけの歴史と格式があれば、押しかける参拝客の願い事もしっかりと聞いてもらえるのではなかろうか。

 かつて、三島には何度も足を運んだことがある。しかし、その駅前にこんな広い庭園と名勝があろうとは思ってもみなかった。バスは、その「楽寿園」という三島市立の公園に案内してくれた。なんでも、明治維新で活躍した小松宮彰仁という親王が、明治23年に別邸として造営したものだそうだ。富士山の雪解け水が湧き出す天然池泉を中心とした庭園が特に印象的であった。

 この後、長岡温泉での昼食、中伊豆ワイナリーの見学とワインの試飲、そして江間のイチゴ狩りとお決まりの観光コースが続いた。イチゴ狩りでは、実を手でもぎ取り練乳をつけて食べる。ハウスには、いまが旬の見事なイチゴがたくさん実っていた。もちろん、30分間食べ放題である。

 しかし、ビニールハウスの中の、シートの上に横たわっているとはいえ、実を洗わないでそのまま食べるというのにはいささか抵抗がある。それでもみんなはどんどん食べていた。私も、赤く熟した特大の粒を、思い切って一つ口に含んでみた。甘い香りが口いっぱいに広がった。あとはブレーキのついていない最新のピスト自転車に乗ったようなものだ。

 アンパンに、アズキのあんこをびっしりと詰め込むつもりで参加したバスツアーだったが、このままではイチゴのジャムパンになってしまいそうだ。
(2012年1月21日)