チェスキー・クルムロフ

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[エッセイ 309]
チェスキー・クルムロフ

 川は北に向かって、Sの字を縦に連ねたかたちで蛇行を繰り返している。これを陸地の形でみると、横に張り出した根元のくびれた半島が、交互に現れてくるように見える。城は、その一番北側、東に向かって張り出した左岸の崖の上に築かれていた。その南の対岸、西に張り出した半島には街が広がっている。

 おとぎ話に出てくるような、中世のまま時間が止まってしまったような、かわいいお城と美しい街、ここが私たちの最初に訪れた町である。その名前はチェスキー・クルムロフ、プラハ城に次ぐチェコ第二の城を中心に広がった古い町である。この城と城下町は、1992年にユネスコ世界遺産に登録された。

 チェスキーとは「チェコの」、そしてクルムロフとはドイツ語で「ねじれた形の川辺の草地」という意味だそうだ。この防御に優れた地に、最初に城が築かれたのは1253年のことである。そのときの領主はビートコフ家、以降領主が変わるたびに西に向かって建て増しされていった。

 最初に建てられた城の中核部分には、ベルグフリード塔とよばれる円筒形の塔が建てられている。私たちはそこに登ってみることにした。入場料は50チェコ・コルナだという。しかし、ユーロは用意していたがコルナの持ち合わせはなく、使う予定もないのでそれに両替するつもりもなかった。

 係員の機嫌が良ければユーロが使えることもあると聞いたので、とにかく覗いてみることにした。しかし、券売所ではユーロではだめとあっさり断られてしまった。ところが、そのガラス窓にはクレジットカードのシールが何種類も貼ってあった。カードを示すとすんなり入場できた。

 「松本城の階段より厳しいね」などとつぶやきながら、狭くて急な螺旋状の階段を黙々と登っていった。頂上には360度のパノラマが待っていた。あまりにも美しかったので、あとで「パノラママップ・図解ガイド」というのを買うことにした。99コルナだという。もちろんカードでOKだった。

 この日、町はちょうど年一度のお祭りに当たっていた。民族衣装に身を包んだ老若男女を、街のあちこちで見かけた。もうすぐそれのパレードが始まるという。その時間までは待てなかったが、着飾った人たちは観光客の要望に気楽に応えてポーズをとってくれた。私たちもさっそくそれに便乗した。

 町を離れる段になって、バスに乗る前にトイレを済ませておこうとした。駐車場の前にそれはあったが、コイン投入式の有料のものだった。案ずるより産むがやすし、ユーロからコルナへの両替機がちゃんと用意されていた。

 それにしても、城も街も人までも、中世の姿のままよく保存されてきたものではある。それも生の生活のままで・・。
(2011年6月27日)

写真 上:街に掲示されているパノラママップ
    下:城の塔(奥)と教会の塔(手前)