ニューヨーク・普通の生活の日記⑪(6/3)「セブンマイル・ブリッジ」

イメージ 1

イメージ 2

[エッセイ 131](新作)
ニューヨーク・普通の生活の日記⑪(6/3)「セブンマイル・ブリッジ」

 海に浮んだ白い橋がはるか彼方へと伸びている。その先は、水平線に吸い込まれなにも確認できない。見えるのは、抜けるような青空とブルーに輝く海との境界線だけである。

 この光景、たばこや自動車のコマーシャルで何度となく見かけた記憶がある。しかし、実際には存在しない合成写真くらいに考えていた。私たちは、いま現実にその橋を渡ろうとしている。

 フロリダ半島の先端、マイアミ・ビーチに連なる形で、小さな島々が延々と南に伸びている。その列島は「フロリダ・キーズ(Florida Keys)」とよばれ、南端の島「キー・ウェスト(Key West)」まで200キロはあるという。この島々には、みな「キー・○○」「○○・キー」という名前がついている。キーとは島という意味だそうだ。

 その南端の島まで橋を伝ってたどり着くことができる。橋の数は50個、いま渡ろうとしているのが最長の「セブンマイル・ブリッジ(Seven mile Bridge)」である。その名前が示すとおり、長さは7マイル、キロ換算の正確な数値は10、86kmにもおよぶ。

 この橋の存在を知ったのは、実はマイアミ行きが具体化してからのことである。息子から、マイアミに行くならその先のキー・ウェストまで足を伸ばした方がいいとのアドヴァイスをもらった。そのためには、国際免許を取得し、レンタカーで3、4日かけて廻るのがいいとの補足もついていた。

 さっそくプランを練りなおし、アメリカ南端までの旅と4日間の日程を確保することにした。しかし、右側通行の運転には自信がなく、家内の反対もあって国際免許はあきらめた。さいわい、マイアミとキー・ウェストの間には、両者を4時間半で結ぶグレイハウンド・バス(Greyhound Bus)という会社の便が1日3往復あった。

 1人片道34、35ドル(4000円弱)、2人目は半額の17、18ドル(2000円弱)という運賃を払い、こうしていま、バスの中から白い橋を感慨深く眺めている。

 車窓から見える島々は、いずれも海抜2、3メートルの平らな形をしている。おそらくさんご礁が隆起してできたものであろう。この南海の楽園も、このまま地球温暖化が進めば大西洋に消えていく運命にある。

入国以来、食事どきになると気軽さと安心を求めてファミリーレストランを探しまわった。しかし、ニューヨークはもとよりボストンからマイアミまでついぞ見かけることはなかった。市中も、一般の国道沿いも含めてである。

この日、ホテルで出されたマカロニ風パスタは、やはり大はずれであった。

[写真は、上=バスから見たセブンマイル・ブリッジ-右の橋脚は古い橋、
     下=花も添えます-マイアミ・ビーチのホテル前で撮ったハイビスカス]