ニューヨーク・普通の生活の日記⑩(6/2)「アール・デコ」

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[エッセイ 130](新作)
ニューヨーク・普通の生活の日記⑩(6/2)「アール・デコ

 ホテルでもらった「Visitor’s Map」という観光地図の片隅に、マンハッタンのそれが刷り込まれていた。マイアミ地域全体の地図をはじめ、ビーチやダウンタウンの拡大図など全部で8種類あるうちの一つである。

 しかし、なんとなく違和感があるのでもう一度よく確かめてみると、そのタイトルには「South Beach」という表示があった。マイアミ・ビーチの南端に位置し、アール・デコ(Art Deco)地区とよばれるもっとも賑やかな場所の拡大図であった。縮尺で、マンハッタンの3分の1ほどである。

 マイアミの2日目は、そんなマイアミ・ビーチのダウンタウンともいえる場所に出かけてみることにした。そこでは、私たちはリンカーン・ロード・モール(Lincoln Road Mall)という歩行者天国が一番気に入った。

 自動車をシャットアウトした幅20メートルほどのその通りは、中央の車道にあたる部分がグリーンベルトとして整備されている。もっとも、その半分以上は野外レストランとして使われており、誰でも自由に通り抜けられるというわけではない。

 個性的なギャラリー、洒落たブティック、きれいに飾られた土産物店、そして開放的なレストランが軒を連ねる。道行く人もおしゃれに着飾り、サンダル履きの水着姿を見かけることもない。そんなしゃれた街並みが、1キロにもわたって続いている。

 歩行者天国のその先にはホテルが建ち並び、ボードウォークを隔てて砂浜へと続く。アール・デコ調とよばれるパステルカラーの建物が、この街の佇まいを南欧風に演出している。そういえば、砂浜で寝そべる人も街行く人も、有色人種がかなりの割合を占めている。ここは、英語よりスペイン語が似合いそうな街である。

マイアミ初日の夕食は、結局滞在中のホテルでとることにした。好みや予算のことも含めてあれこれ相談し、シーフードのパスタに落ち着いた。あまり期待していなかったが、出された麺はさっぱり味のなかなかのものであった。

今日2日目も、期待外れのリスクを考えて、同じ場所で同じものを注文した。ウェイトレスにからかわれてしまったことはいうまでもない。

 ところで、「東洋のマイアミ」であるが、こうしたあやかり商法的な愛称のつけ方からは、もうぼつぼつ卒業してもいいのではないか。下手をすれば、コンプレックスの裏返しととられかねない。本家・マイアミの尺度では、ここはスッポンほどの評価しかえられないかもしれない。江ノ島・片瀬海岸には、独自の長い歴史と文化があり、ここにしかないよさがあるはずである。

[写真、上はリンカーン・ロード・モール
    下はアール・デコ地区のビーチ]