ニューヨークこぼれ話(2) 「アメリカ・空の旅」

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[エッセイ 139] (新作)
ニューヨークこぼれ話(2)「アメリカ・空の旅」

 アメリカの乗客は、謙譲の美徳を発揮してきちんと秩序を守っている。そういって、家内はしきりに感心していた。飛行機が到着したとき、前の人から譲りあいながら順序よく降りていく光景を指してのことである。

 搭乗券にはグループナンバーが記載されており、私たちはファーストクラスの次に搭乗できた。早く乗れたのは、単に最後尾のグループであったためだ。その搭乗機がゲートを離れるのに、それから30分以上を要した。

 その飛行機は、外から見たら結構大きく見えたが、通路は真中の1本だけで両側に座席が3列ずつ配置された中小型機であった。なじみがないと思ったら、日本国内では就航していないボーイング757という機種であった。

 この757型は、日本でおなじみの767型の姉妹機として開発されたものである。200人以上乗れるが767型よりやや小型である。燃費はいいが使い勝手がよくないためあまり売れず、生産はすでに中止されているという。

 例の米同時テロで世界貿易センターに突入したのは、2機ともボーイング767型であるが、ワシントンのペンタゴン(米国防総省ビル)に突入したもう1機はこの757型である。

 ところで、ニューヨークに着いて以降、私たちの持っているスーツケースが浮いて見えるようになった。私たちのものは、色彩豊なプラスチック製の硬いケースである。念のためにと、色柄のベルトを巻いている。

 一方のアメリカ人たちは、一様に黒のソフトタイプを携帯している。大きさは私たちのものよりむしろ大きい。日本人がごく普通に使っているタイプは、1度も見かけたことがない。なぜなのか、私にはいまもって謎である。

 ニューヨーク・マイアミ間ともなれば海外旅行なみの旅である。荷物は大きくて当り前だ。その黒い大きなスーツケースを、だれもが機内に持ち込む。別送では、トラブルが多すぎてまったく信頼できないためだそうだ。

 1本しかない通路をふさぎながら、その大きな荷物を棚に上げたり下ろしたりすれば、その脇をすり抜けていくことなどできるはずもない。ゆずりあい、辛抱強く待つこと以外、飛行機を乗り降りする方法は見当たらないのである。

 アメリカでは、飛行機はバス代わりに利用されているというが、搭乗手続きはそれほど手軽ではない。おまけに、上着を脱げ、ベルトは外せ、靴も脱げ、そしてパスポートは何度も見せろとセキュリティ・チェックは厳重を極める。マイアミからの帰り、雷雨のため3時間も出発が遅れたが、客はほったらかしにされたままであった。

 世界に冠たる航空大国も、運行サービス面は課題の山である。
(2006年7月24日)

[写真、上はマイアミの海・・大西洋、
    下はキー・ウエスト、デュバル通りの観光トレイン]