優勝フィーバー

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[エッセイ 31](既発表 3年前の作品)
優勝フィーバー

 やっと、阪神のリーグ優勝が決まった。通信社の記事は、そのときの大坂・道頓堀の様子を次のように伝えている。

 道頓堀が「狂喜の街」と化した。阪神タイガースの18年ぶりの優勝が決まった15日夜、大坂・道頓堀の戎橋では、昨年のサッカーW杯時を上回る5千人以上がダイブを敢行。大阪府警の厳戒取締りにもかかわらず、男女が次々と川に飛び込み、なかには全裸で飛び込むものも出現。さらに橋の上では興奮したファンが胴上げ、ジェット風船も飛ばすなど完全な無法地帯と化した。

 世界各地のタイガースファンの間にも、喜びの輪は広がっていった。ロンドンでは、トラファルガー広場で「六甲おろし」が熱唱された。上海では、料理店に集まってお互いにビールをかけあい爆竹を鳴らした。またパリでは、シャンゼリゼ通りを凱旋門に向けて六甲おろしで行進し、なかにはセーヌ川にダイブしたものもいたという。

 阪神は、開幕以来順調に首位を独走してきた。しかし、昨年がそうだったように、いずれ首位を明け渡すときが来るだろうと誰もが不安に思っていた。たとえゲーム差が20にまで達しようとも、不信感は拭いようがなかった。ところがその勢いは衰えることなく、とうとうオールスター前にマジックまで点灯させてしまった。そしてついに、道頓堀を18年前の、いや39年前の狂喜の街に戻してしまった。

 阪神の優勝は、なぜこうもみんなをフィーバーさせるのだろう。セ・リーグ唯一の在阪球団であるためか。人気・実力とも常にナンバーワンと目される巨人の最大のライバルであるためだろうか。多くの人は、親会社を含め阪神球団の頼りなさを、その人気の秘密としてあげている。

 4百年前、豊臣家が徳川家康に滅ぼされて以来、大阪はつねに東京の風下に置かれてきた。東京代表の巨人対、大阪代表の阪神という東西対立の素朴な庶民感情の構図が、巨人の人気を不動のものにする一方、阪神をいっそう盛り立てていくことになったのではなかろうか。

 テレビで見る力道山は、いつも外人の悪役に散々やられていた。もうだめかと思われた瞬間、抑えられていたエネルギーが一気に炸裂し大逆転劇が始まる。阪神の優勝による関西発の超エネルギーが、日本全体を爆発的に元気にしてくれると信じたい。タイガースフィーバーの経済効果が、日本全国に大きなうねりを巻き起こしてくれることを期待したい。

 あれから18年、そしてこれから18年後、私は80歳を超える。その時、元気な姿でもう一度この感動を味わってみたい。
(2003年9月16日)

※このエッセイは、今年のものではありません。
  他のチームのファンの方には申し訳ありません。今年も、逆転優勝することを祈念して掲載しました。