リンゴ

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[エッセイ 477]
リンゴ

 わが家の朝食には、必ず果物のお供がついてくる。秋から春先にかけては、リンゴがその大役を担う。あのかおり豊かな甘酸っぱい味は、一日のスタートに欠かすことのできない逸品である。

 リンゴの、あの鮮やかな紅色の、くるりとした丸い姿は、なぜか人の気持ちを童心に返らせ穏やかにしてくれる。リンゴの皮をむいていると、つい、♪私は真っ赤なリンゴです お国は寒い北の国・・♪と口ずさんでしまう。この、「りんごのひとりごと」という童謡は河村順子によって吹き込まれ、1940年に発表されたそうだ。それにしても、なんとも純朴で親しみやすい歌である。

 昭和20年に街にあふれた並木路子の「リンゴの唄」は、敗戦後の暗い世相を前向きなものへと一変させた。あの歌があったからこそ、それに励まされ希望を抱いて復興に取り組めたのではなかろうか。リンゴの歌は、1952年発売の美空ひばりの「リンゴ追分」へ、さらには1956年発売の三橋美智也の「リンゴ村から」へと繋げられていく。その前にも後にも、題名に「リンゴ」とつく歌は続々と発表され、数えてみると50曲以上に上っている。

 リンゴの原産地はロシアのコーカサス地方だそうだが、それがヨーロッパ中に広まり、イギリスを経て移民とともにアメリカに渡ったという。西洋リンゴとして日本に入ってきたのは1860年前後といわれている。明治4年、1871年には北海道に導入され、紆余曲折を経て明治20年代(1887年以降)に入ると本格的に栽培されるようになったという。

 世界中で栽培されているリンゴは、年産6千3百万トンに達するそうだ。そのうち、中国が48%と圧倒的なシェアを占め、アメリカの6%、ポーランドの4%がそれに続く。日本はその1%強の72万8千トンだそうだ。県別では、青森県が57.9%と圧倒的に多いが、そのうち弘前市だけで2位並の20%に達するそうだ。以下は長野県19.4%、山形県6.2%などとなっている。

 国内の銘柄別シェアは、「ふじ」が52.1%でトップ、後に続くのは「つがる」12.6%、「王林」7.6%となっている。リンゴを買うときは、尻まで赤いもの、大玉より中玉、ずっしりと重いもの、そして芳醇な香りの強いものがいいそうだ。ちなみに、銘柄の頭に“サン”とつくのは無袋で栽培されたお勧め品だそうだ。

 リンゴは、アダムとイブの禁断の果実ではないかといわれ、ウイリアムテルが息子の頭に乗せて弓で射る話でも有名である。ニュートン万有引力は、リンゴの落ちるのを見て発見されたという話はあまりにも有名である。

 リンゴが赤くなると医者が青くなる、一日一個のリンゴで医者知らず、などといわれる。これからも、朝食にはリンゴを欠かさないようにするつもりである。
(2017年12月15日)