野菜の高値

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[エッセイ 483]
野菜の高値

 スーパーの野菜売り場には、たいていゴミ箱が備えられている。キャベツやハクサイを買おうとする客が、外側のかたくてまずそうな葉っぱを2~3枚剥がして捨てていくためだ。最近は、その葉っぱだけを持ち帰る客がいるらしい。高値で野菜に手が出ないためか、あるいは飼っているウサギに与えるためだろうか。最近、「そんなことはしないでください」と張り紙がしてあった。

 ウサギなど飼っていなくても、それで間に合わせたいと思う人がいても不思議ではない。そうしないまでも、剥がす枚数を減らすのはごく当然の帰結であろう。なにしろ、野菜と名のつく食品は、ほとんどが平年価額の2倍以上の高値で安定したままである。

 手元に、ダイコン:204%、ハクサイ:239%、キャベツ:253%という数字がある。最新の価額調査の平年比だそうだが、実感はそれ以上である。あまりにも高くて手が出ないので、キャベツやハクサイは、半分や4分の1の惨めな姿で売られるのが当たり前になっている。

 これらの直接の原因は、昨年10月の2度の台風、11月の低温、年末からの低温と干ばつ、そして1月の降雪だといわれている。加えて、構造的な要因もいくつかある。保存の利かない生鮮食品なので、そのときの気象条件に大きく左右される。作付けから収穫までに時間と手間がかかり、状況の変化に機敏に対応することができない。農業従事者が高齢化し、供給体制が先細り傾向にある。応急対策として、緊急輸入が考えられるが、かつての残留農薬問題が尾を引いてだろうか、あまり有効な動きにはなっていないようだ。

 こうなったら、私たち消費者は当面自衛策で乗り切るしかない。トマトやピーマンなどハウスもの野菜、もやしや豆苗といった工場で作られる野菜、カット野菜や野菜ジュースあるいは納豆といった加工された野菜。さらには、ホウレンソウ、インゲン、ネギ、ブロッコリーなどの冷凍野菜、ロールキャベツや餃子など野菜のたくさん入った冷凍食品、リンゴやバナナなど野菜代替品としての果物。これらの商品を、メニューに重点的に取り上げるということである。
 
 一方、生産者に対しては、天候に左右されない安定的な栽培を目指して、大規模温室栽培に取り組んでもらいたい。長期戦略に基づく農業の工業化ということである。もとより、高齢化対策、人手不足対策としての大規模化と機械化は避けて通れないはずである。さらには、開発輸入も一方の大きな課題である。

 3月後半からは、野菜が豊かに出回る季節となる。人の気持ちもおおらかになり、野菜の値下がりも加速するだろう。暖くなったら、ワラビ、ゼンマイ、フキ、ツクシ、などの山菜も積極的に採りに行き、健康と家計の足しにしよう。
(2018年3月10日)