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[エッセイ 430]


 この季節になると、葉っぱが落ちて素っ裸になった枝に、朱色の実が鈴なりにぶら下がっている。柿の木は、山間地や田園地帯はもちろん住宅街でも、秋にはなくてはならない日本の原風景といえよう。柿はカキノキ科カキノキ属の落葉高木、雌雄同株と定義されている。山中に自生する一方、古くから果樹としても栽培されている。木は「柿の木」、その実は「柿」と呼ばれている。

 原産は中国だが、日本には奈良時代には入ってきていたと思われる。外国では日本が原産地ではないかとみられており、その名も“kaki”で世界中で通用するそうだ。古いゴルファーにはなじみのパーシモンという名は、アメリカ原産の小型の柿で日本のものとはかなり違うという。柿には甘柿と渋柿があるが、本来は渋柿だけだった。それが突然変異で甘柿が生まれたそうだ。

 柿の渋みは、渋味成分である「タンニン」が口の中で溶けるかどうかで決まる。溶けると渋く、溶けないと甘く感じる。甘柿は、成長過程でタンニンが不溶性に変わるため渋みを感じなくなる。渋柿が渋くなくなるのは、アルコールや炭酸ガスによってタンニンが可溶性から不溶性に変わるためだ。ちなみに、干し柿は干しているうちに渋みが自然に抜けるのだという。

 ところで、ことわざに「瓜は大名に剥かせよ、柿は乞食に剥かせよ」というのがある。柿は皮のすぐ下が最も甘いので、皮はなるべく薄くむいた方がいいということだ。また、「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざもある。ビタミンC、βカロテン、カリウムがとくに豊富で、柿を食べるとみな健康になるということのようだ。ちなみに、予防効果の大きい病としては、風邪、高血圧、動脈硬化脳梗塞心筋梗塞、ガンなどがあげられる。

 柿の木は緻密で堅いといわれている。このため、家具などに利用されているが、割れやすいことから利用は極めて限定的のようである。また、柿の木は、枝が折れやすいので登るなと古くからいわれている。渋うちわなどにみられる柿の渋は、防腐や防水用の塗料として古くから利用されている。

 日本の年間生産量はおよそ25万トンで、うち和歌山県が26%、奈良県が14%、そして福岡県が12%と、3県で全国の半分強を占めているという。また、世界全体の生産量は440万トンで、うち中国が330万トンと全体の4分の3を占めている。2番目が40万トンの韓国、そして3番目に日本がランクされることになる。

 柿は、「桃栗三年柿八年」といわれるように、果実が取れるようになるまでには長い歳月が必要である。柿にはそれだけの価値があると考えてもよさそうだ。もっともっと柿に親しんで、厳しい冬を健康に乗り切りたいものだ。
(2015年11月30日)