チューリップ

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[エッセイ 437]
チューリップ

 我が家のリビングルームに掛かっているカレンダーには、広大なチューチップ畑の写真が載っている。遠くに風車が見えるところをみるとオランダのようだが、国内にも似たような風景はたくさんある。もちろん、近所のちょっとした公園や空き地にも、チューリップの群落は欠かせない存在になっている。

 我が家でも毎年鉢植えを楽しんできた。しかし、その栽培は易しそうで結構難しいものがある。球根が、保存中に腐ったり、中身が空っぽになってしまったことがある。芽が出ても花が咲かなかったり、咲いても花が小さかったこともある。ある時は、花の色が混じりあってしまっていたことさえある。

 この花はユリ科チューリップ属の一年草で、球根から芽を出して花を咲かせる。その種類は5千にも及ぶという。花の咲き方は、一つの球根から花を一つだけつけるものと複数つけるものがある。花弁の形は、丸いもの、とがったもの、フリル状になったものなどがある。花の色は、赤、黄、オレンジ、白、緑、紫と多彩であるが、青だけは今のところ創り出されていないようだ。

 チューリップはトルコが原産で、その名前は頭巾という意味のペルシャ語「tulipan」が語源になっているそうだ。ヨーロッパに紹介されたのは16世紀になってから。それが急速に普及し、本家のトルコはもとより、オランダ、ベルギーそしてアフガニスタンでは国花にまで指定されているという。

 日本に初めて紹介されたのは1869年だった。しかし、この時はなぜか根付なかったそうだ。そして大正時代に再び上陸し、新潟県で栽培されるようになったのが実質的な始まりとなったようだ。日本での球根の生産シェアは、富山県が53%、新潟県が45%と両県で大半を占めている。そんな縁もあってだろう、両県ともこの花を県花として定めている。

 チューリップの花言葉は、その姿、形からプラスイメージのものばかりで、マイナスを感じさせるものは全く見当たらない。華美、恋の告白、美しい目、魅惑、博愛、思いやり、真面目な愛、正直、丁重など、男女間にかかわる甘い雰囲気をもつものが多い。
 

 チューリップは、長い間日本人に世代を超えて愛されてきた。しかし、その形状や原色に近い色合いのためだろうか、どこかエキゾチックな雰囲気が色濃く残っている。風車をバックに、クレヨン画や油絵として描かれることはあっても、五重の塔をあしらった水墨画はちょっと似合いそうにない。

 それでも、いまや日本の春には欠かせない存在である。子供から老人まで、広く愛される国民的アイドルといっても過言ではなかろう。その我らのチューリップを、もっともっと大切にいつくしんでいきたいものである。
(2016年4月2日)