塩豆大福

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[エッセイ 522]
塩豆大福

 車を使えば10分とかからないところに小型スーパーがある。あまりきれいとはいえないが、とにかく安いので、4~5日に一度は買い物に訪れている。そのレジのすぐ手前に、つい手を伸ばしたくなるようなお菓子のたぐいが並べられている。饅頭や団子あるいは大福といった和菓子類が多い。

 会計をしようとしている矢先、それらの内の一つをついかごに入れてしまう。我らが手に取るのは、たいていが塩豆大福である。小型の大福が5個、透明のパックに入っていて、税込み148円である。考えたり躊躇したりするほどの値段ではない。気が向けば気軽にかごに入れるだけのことである。

 この大福は、小豆の粒餡を餅で包んだものだが、その餅には赤えんどう豆が練り込められている。餅のきめ細かさと対照的な豆の歯触りが、食感の重要なアクセントになっている。味付けは、甘味と塩味が絶妙にバランスしている。賞味期限が2~3日と非常に短いが、逆にそれが食の安心感に繋がっている。

 わが家でひいきにさせてもらっているのは、栃木県の工場で製造された一品である。原材料は、砂糖、もち粉、小豆、赤えんどう、還元水あめ、食塩、ぶどう糖ソルビット、グリシン、加工でん粉、酵素などとなっている。皮は、その構成から見て、ついたものではなくもち粉を練ったものと推測される。

 ところで、大福餅とは、小豆でできた餡を餅で包んだ和菓子で、それに食用のもちとり粉やコーンスターチなどの粉をまぶしたものと定義されている。餅はきめ細かくつかれたものを使い、餡は小豆で餅と同量もしくはそれ以上を使う。

 大福餅の起源は、「うずらもち」「腹太餅」とよばれる大型の丸まった餡入り餅だった。それを小型化して「大腹餅」として売り出したところ大衆に受け入れられたそうだ。江戸中期、1770年代のことだという。その名前である大腹餅のうち、「腹」の部分がいつの間にか「福」に置き換わったようだ。

 大福餅で、餅の皮の部分に赤えんどうや大豆を混ぜたものを豆大福と呼ぶ。皮や餡に塩を効かせたものを塩大福と呼ぶ。そして、両方が合体したものが塩豆大福である。なお、皮の部分にヨモギを混ぜたものを草大福といい、クルミを練り込んだものをクルミ大福というが、混ぜ物によって種類は際限なく拡大していく。栗大福、オレンジ大福、ピーチ大福、メロン大福、ブルーベリー大福、ブドウ大福、梅大福、コーヒー大福、カフェオレ大福、モンブラン大福、プリン大福、カスタード大福、ティラミス大福・・・と果てしない。

 小さいので2個食べたくなるが、あとの食事がまずくなるので1個で我慢している。かつて、ひいきにしていた「不揃いどら焼き」は、いつの間にか忘れられた存在になっていた。
(2019年7月22日)