寅年

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f:id:yf-fujiwara:20220101141558j:plain[エッセイ 618]

寅年

 

 新しく迎えた2022年は、十二支では3番目の寅、十干・十二支では39番目の壬寅(みずのえとら)に当たる。この寅という字は、十二支では3番目、動物では虎、方位では東北東、そして時刻では午前4時及びその前後2時間を意味する。いまでは、寅はもっぱら寅年のキャラクターである虎のことを指し、他の意味に使われることはほとんどない。

 

 虎はネコ科の哺乳類で、成獣の体長は2~3メートル、黄褐色で黒い縞模様がある。尾が長く、そこにも黒い縞模様がついている。鋭い牙と頑健な鈎状の爪をもち、雄の頬には発達したヒゲが生えている。森や竹薮で単独で生活し、水にもよく入る。主に夜に活動し、シカやイノシシを補食するほか、ゾウやサイを食べることもある。生息地域においては、まさに百獣の王として君臨している。

 

 虎は日本を除く東南アジア全域に分布している。シベリアトラ、ベンガルトラ、チョウセントラ、アムールトラなど8つの亜種がいる。北方に棲むのは大型の種類で、南に行くほど小型になるという。19世紀には10万頭あまりがいたようだが、いまでは2千頭そこそこにまで減っているだろうと推測されている。この地域の生き物の頂点に立つがゆえの絶滅危惧種ではなかろうか。

 

 虎は動物の頂点に立ち、人々との関わりも深いことから、虎にまつわる諺や熟語はゆうに100を越す。「虎は千里往って千里還る」「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す」「前門の虎、後門の狼」「虎を養って虎に噛まれる」「虎を野に放つ」等々。そして単語に近い熟語では、「虎の子」「虎の巻」「虎になる」「虎視眈々」「張り子の虎」「竜虎相撃つ」など挙げればきりがない。

 

 虎は「力」や「権威」の象徴とみられていることから、他人の権威をかさにきて威張り散らす小者のことを「虎の威を借る狐」という。その権力を持つ人を怒らせるようなことをしたら、その行為は「龍のひげを撫で、虎の尾を踏む」と形容される。大切な秘蔵の品を「虎の子」というのは、母虎の愛情が深く、大切に子育てすることにちなんでいる。価値あるものを手に入れたいのであれば、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と危険を冒す覚悟が必要であるといわれる。

 

 コロナ禍3年目を迎えるにあたって、私たちの生き方を虎にまつわる諺や格言を当てはめて、しっかりと噛みしめてみてはどうだろう。「前門のデルタ、後門のオミクロン」「コロナが虎視眈々と狙ってる」「誰でも分かるコロナ対策虎の巻」「政府の無策は虎を野に放つがごとし」「政府支給の10万円は羊質虎皮」「ワクチン打たなきゃ虎児を得ず」「ノーマスクは虎の尾を踏むがごとし」・・・。

 

 新しく迎えた2022年が、バイタリティあふれる雄虎のごとく、そしてまた慈愛に満ちた母虎のごとくあってほしいものだ。

                       (2022年1月1日 藤原吉弘)

(写真)上:初日の出直前の富士山頂(テレビ朝日の画面から引用)

    中:ダブル・ダイアモンド富士(テレビ朝日の画面から引用)

    下:大絵馬・・白旗神社の境内に掲示されているもの