亥年

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[エッセイ 504]
亥年

 今年は、十干十二支(じゅっかんじゅうにし)、略して“えと”の「己亥(つちのとゐ)」年にあたる。最初の甲子(きのえね)から数えると、36番目の年になる。ちなみに、十干十二支とは、十干と十二支を組み合わせた60個からなる序数のことである。己(つちのと)は十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)の6番目、亥(ゐ)は十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の最後の12番目にあたる。

 普通、“えと”は十二支だけでいうことが多い。その慣例に従えば、今年のえとは単に12番目の“亥年”ということになる。「亥」は「がい」とも読み、閉ざすという意味で、草木の生命力が種の中に閉じ込められた状態を表わす。

 この亥年を、イメージキャラクターの動物でいうと「猪」年ということになる。実は、亥と猪は、まったく関係がない。暦が考案された当時の中国では、ほとんどの人は字が読めなかった。そこで、思い当たる動物を適当に当てはめたようだ。なぜ亥年に猪を当てたのか、その根拠はいまもって不明のままだそうだ。

 ところで、新たに迎える亥年とはどのような年になるだろう。国際情勢をもとに綿密に解き明かしたものから、占いに基づくものなど諸説あるが、亥年ということをもとにした見通しは所詮占いの域を出ない。それでも、新年の見通しは、キャラクターの猪の性格になぞらえてたてるのが一般的なようだ。
 
 猪は突進力が強く、時速45キロくらいの速さで走ることができる。猪は犬と同じくらい鼻が敏感である。猪の肉は万病を防ぐと信じられ、無病息災の象徴とされている。などなど、とにかく生命力の強い生き物のようだ。現に、原発事故で無人となった福島県浜通り地方では、猪が大繁殖しているという。わがふる里でも、海を泳いできた連中が繁殖し、横暴の限りを尽くしていると聞く。

 これまで、亥年にちなんで猪のことを云々してきたが、亥年のキャラクターを猪としているのは日本だけだそうだ。この暦を使っている他の大部分の国では、豚がその重責を担っているという。この、十干十二支の暦が伝わってきた当時、日本には豚がいなかったのでその元祖である猪を代わりに当てたようだ。

 豚は、猪を家畜化したものだ。その歴史は古く、起源は紀元前8000年頃ではないかといわれている。日本では、縄文時代から弥生時代にかけて細々と飼育されていたが、いつの間にか廃れてしまったという。日本に再び登場するのは、なんと江戸時代末期から明治初めごろにかけてのことだそうだ。

 豚は、全世界で10億頭近くが飼育されているという。うち、中国が半分の約5億頭、日本では約1千万頭が飼われているそうだ。豚は不浄の動物とされているところもあるが、多くの国ではとくに食材として重宝されている。

 豚の元祖猪年にちなんで、猪も人ともっと近い関係になれないものだろうか。
(2019年1月1日)