戌年

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[エッセイ 478]
戌年

 今年は、十干十二支(じゅっかんじゅうにし)、略して干支(えと)の「戊戌(つちのえいぬ)」年にあたる。最初の甲子(きのえね)から数えると、35番目ということになる。ちなみに、十干十二支とは十干と十二支を組み合わせた全部で60個の序数である。戊(つちのえ)は十干(甲乙丙丁戊己庚辛壬癸)の5番目、戌(いぬ)は十二支(子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥)の11番目に当たる。

 普通、干支は十二支だけでいうことが多い。その慣例に従えば、今年の干支は単に11番目の“戌年”ということになる。さらに、イメージキャラクターの動物でいうと「犬」年ということになる。俗説によると、犬年は、元は10番目だった。しかし、9番目の猿と仲が悪かったので、鶏が仲に入って両者をトリもち、犬を11番目に移らせたといわれている。

 ちなみに、戌の本来の読みは「じゅつ」で、農作物を刈り取り、ひとまとめに括ることをいう。併せて、戌は「滅」をも意味し、草木が枯れる状態を指している。「枯れる」などというのはあまりうれしくないが、この場合は「新たな芽吹きは、葉が枯れ落ちるときに始まる」と前向きに解釈すべきであろう。

 ところで、犬についてであるが、猫とともにペットの代表格である。しかし、犬は干支に取り立てられているが、猫はそれから排除されている。世の中には、犬好きの犬派と猫好きの猫派が両立している。しかし、ネガティブのイメージの強い猫に対し、ポジティブの印象が強く人間の役に立つという点で犬が一歩も二歩も先を行っているようだ。

 犬が人間との関わり合いを持つようになったのは1万5千年くらい前からとみられ、家畜化された一番古い動物である。猫の倍くらいの歴史があると考えてよさそうだ。犬は、かわいいだけでなく、実際に人間の生活の役に立つという点でも、猫はもちろん他の家畜をも大きくリードしている。

 実際、犬にしかできない、あるいは彼らにさせたい仕事を挙げてみると、麻薬探知犬、警察犬、災害救助犬盲導犬聴導犬介助犬、牧畜犬、猟犬、競争犬、闘犬、害獣駆除犬そしてセラピードッグなど挙げればきりがない。犬の手伝いなしに社会は成り立たないといっても過言ではあるまい。

 犬は多産といわれている。それが証拠に、人間の乳房は2個であるのに対し、犬はだいたい10個くらいはある。また、犬のお産は軽いそうで、それの象徴としても扱われている。お嫁さんが懐妊すると、戌の日にお祓いを受けた腹帯を戌の日に巻くと安産が約束されるという言い伝えもある。

 少子化で先行きが心配な日本だが、戌年を契機に多産の気運が芽吹き、元気な子供たちが増えていくことを期待したいものだ。
(2018年1月1日)