酉年

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[エッセイ 453]
酉年

 来年の干支は、十二支の10番目に当たる酉(とり)である。60年に一度回ってくる十干と十二支の組み合わせでいうと、34番目の「丁酉」(ひのととり)にあたる。酉は、口の細い酒つぼをイメージしたもので、本来の読みは「ゆう」といい、酒にまつわる言葉に用いられる。酉の由来は、果実が極限まで熟し、酒気の溢れだす直前の状態にあることを表したものだそうだ。

 酉年の「とり」は「とりこむ」に通じ、商売などでは縁起のいい干支である。これは、酉が物事の頂点にまで極まった状態とも解釈されることから、酉のつく年は商売繁盛に繋がるといわれている。酉年生まれの人が、世話好きで社交範囲も広く、情報に敏感で時代を先取りする能力に優れているといわれていることとも深く結び付いているようだ。

 酉年生まれの人の特徴は、鋭い直観力をもち決断に迷いがない、行動力が抜群、そして親切で面倒見がよく社交性に富んでいる、など商才に長けているという。反面、本音を隠したがる、駄目だと判断したらすぐあきらめてしまう、プライドが高い、神経質などが短所として挙げられている。

 その、酉年のキャラクターは鶏である。しかし、なぜそう決まったかはいまだ不明のままである。ニワトリが地球上に現れたのは、ヒツジやヤギあるいはブタと同じ紀元前8千年のころとみられている。ニワトリの人との関わりは、最初は鳴き声を競わされたり闘鶏として利用されたりした程度だった。卵や肉が食用にされるようになったのはずっと後になってからのようだ。

 ニワトリはキジの仲間である。頭部に鶏冠(とさか)をいただき、特にオスは派手な出で立ちで身体もメスよりかなり大きい。そのオスは、早朝大きな声で鳴いて夜明けを知らせる。メスは卵を産んだときけたたましく鳴く。トリの瞼は、人間と違って下から上に動いて眼球を覆う。その眼球は動かないので、首を振ることによって周囲を見渡す。彼等は基本的には飛ぶことはできない。

 日本のニワトリは、弥生時代に中国から持ち込まれたという。日本で卵を食するようになったのは江戸時代前半といわれている。なんでも、無精卵は孵化しないということが判ってきて、それを食べても「動物の殺生」には当たらないと考えられるようになったためだそうだ。鶏肉を食するようになったのは、ずっと遅れて江戸時代中期以降といわれている。また、ニワトリは、ヒンドゥー教のウシやイスラム教のブタのような禁忌にはあたらないという。

 現代では、国境を越え宗教をこえて、カシワや鶏卵なしでの豊かな食生活は考えられない。トリ年を機に、トリの良さをあらためて見直し、彼らを大切に扱っていく機運をさらに高めていきたいものである。
(2016年12月27日)