鳥インフルエンザ

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[エッセイ 452]
鳥インフルエンザ

 来年は12年ぶりの酉年だというのに、鶏たちはその直前になって鳥インフルエンザによる危急存亡の危機に直面している。過去何度もそのような事態に遭遇してきたが、その都度多大な犠牲を払いながらもそれを乗り越えてきた。記憶に新しいところでは、2010年秋から2011年春にかけて広域にわたって大流行し、鶏など計約185万羽が殺処分された事例がある。

 今年に入ってからでも、11月に新潟、青森の両県で約57万羽が殺処分されたほか、北海道では、いままさに熱い戦いの真最中にある。北海道・清水町の養鶏場では、今月16日の朝、約30羽が死んでいるのが見つかり、検査の結果、高病原性のH5型鳥インフルエンザウイルスが検出された。

 北海道は、この養鶏場で飼育されている約27万羽の殺処分をきめ、自衛隊にも派遣を要請して、約700人、24時間体制で対応を急いでいる。北海道はまた、感染拡大防止に向け車両を対象に半径10キロ圏内に10カ所の消毒ポイントを設けた。さらには、半径3キロ圏内を鳥や卵の移動制限区域に、3~10キロ圏内を搬出制限区域として区域外への持ち出しを禁止した。

 鳥インフルエンザは、ニワトリやウズラなどの家禽類が、インフルエンザウイルスに感染することによって発症する感染症である。ウイルスは、カモなど自然界の、水禽類の2割くらいの腸内に棲息している。水鳥はそれによって発症することはほとんどないが、それが糞などを介して家禽類に伝染すると、非常に高い病原性に変異し、鳥インフルエンザとして発症する。感染後の爆発的な流行と致死率の高さは、いままでに見てきた悲惨な事例のとおりである。そのウイルスは、高病原生A型インフルエンザウイルスと呼ばれている。

 人が、感染した鶏の肉や卵を食べて発症した例はないそうだ。70度以上で加熱すれば心配はなく、胃酸で毒性もなくなるそうだ。しかし、感染した鳥を解体したり、鳥の糞の粉末を大量に吸い込んだりして感染したという事例は中国などで実際にあったという。世界保健機構(WHO)は、感染した人や豚の体内で遺伝子が変化し、新型インフルエンザが発生する事態を警戒している。

 それにしても、域内の鶏全部を殺処分にするとは残酷な話である。爆発的な感染拡大を防ぐ最善の策かもしれないが、当の鶏たちはもとより、養鶏農家にとってもまさに死活問題である。また、物価の優等生である鶏卵市場に激変の走る可能性もあり、私たち消費者にとっても他人事では済まされない。

 ニワトリは、私たちの最も身近な生き物の一つであり、食材としても全人類にとってなくてはならない存在である。なにか、効果的な予防ワクチンや発症してもすぐ治療できるような妙薬はできないものだろうか。
(2016年12月20日)