鶏卵が高い

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[エッセイ 595]

鶏卵が高い

 

 最近、鶏卵が高くなっている。普通に買おうとすると、10個入りのパックが税別で200円はする。それも、サイズは“S”、よくても“S”と“M”を混ぜ合わせたものだ。その一方、1,000円以上の買い物をしてくれたらという条件付きで、10個入りパックを100円で特価販売している店もある。しかし、それでは赤字か、そうでなくても相当無理をしていることになるはずである。

 

 そこで、卸売り相場の変遷を調べてみた。ここでは、JA全農たまご(株)が法人相場として発表しているものを取り上げてみた。単位は1kgあたり、Mサイズにすれば15~6個分の年平均の値段である。2016年=205円、2017年=207円、2018年=180円、2019年=173円、2020年=171円、そして2021年前半6ヵ月は217円となっている。うち、直近3ヵ月は253円と急騰している。

 

 相場の月別の変動をみると、例年同じような変遷をたどっている。1月が一番低く、春に向かって徐々に上がって4月ごろ最初の山を迎える。その後、夏場に向かって低下傾向を続け、8月ごろに一旦底を見せる。そこから年後半に向けて徐々に上がり、年末にはピークを迎える。今年に限っては、昨年末からそのまま上がり続け、ピークの6月には260円となっている。

 

 こうした相場の変動は、主に次のような要因によると考えられる。その一つは、飼料となる輸入トウモロコシの豊凶と輸入時の為替レートの変動である。二つ目は、現地の自然災害の状況と、それに加えて夏場の高温被害の程度も相場を大きく左右する。そして三つ目は日本国内の事情で、行政の姿勢と実際の措置、さらには鳥インフルエンザの発生状況などである。

 

 今年は、鳥インフルエンザの発生が多く、昨2020年の11月から今年3月までの5ヵ月間に採卵鶏900万羽が処分されたという。国内の採卵用の鶏は1億3千万羽といわれているので、全体の7%近くが処分されたことになる。鳥インフルエンザの発生は年中行事のようになってはいるが、これだけまとまって処分されれば、鶏卵相場に大きな影響が出るのは当然といえよう。

 

 不幸なことに、感染症はコロナ禍というかたちで人間界にも広がってきた。人々は巣ごもりを余儀なくされ、普段家事などにはあまり興味を示さなかった人までが台所に立つようになった。食卓には素人でも簡単に手がけられる卵料理が並び、ケーキ作りには家族をあげて取り組むことになった。卵の需要は、巣ごもり特需としていっそう大きく膨らんできたわけである。

 

 物価の優等生を通してきた鶏卵だが、鳥インフルエンザと新型コロナという二大感染症によって大きな曲がり角を迎えた。早く正常な姿を取り戻し、また優等生として売り場の中心にもどってきてほしいものだ。

                      (2021年6月20日 藤原吉弘)