ゼラニウム

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[エッセイ 506]
ゼラニウム

 昨年の春頃のことだった。家内が、知り合いからゼラニウムの小枝を数本もらってきた。挿し木にしておくと、そのうちきれいな花が咲くと教えられたという。この花は、傷つけたりするとちょっと嫌な匂いがするので、あまり気は進まなかったが、とにかく鉢に植えておくことにした。

 植えたのは4本だったが、そのうちの2本がうまく根付いた。枝も2~3本ずつ立派に張り出し、濃い緑の葉っぱが青々と茂ってきた。1カ月も経つと、それぞれの枝先に花のつぼみらしい粒々がかたまりになって現れてきた。それらは、やがて朱色の花の房として大きく膨らんできた。

 この花は、フウロソウ科テンジクアオイ属のペラルゴニウムという種類だそうだ。挿し木にしたのは、その「ペラルゴニウム」の一種だが、園芸用の四季咲きのもので、とくに「ゼラニウム」と呼ばれている。南アフリカのケープ地方が原産で、ヨーロッパのアパートの窓辺を飾る鉢植えは大抵がこの花だそうだ。

 常緑性で、開花期間が長く育てやすい。開花時期は3月から12月で、1年の半分以上咲いていることになる。花の色は、白、赤、ピンク、オレンジ、紫などがある。匂いがきついので虫が付きにくい。水やりは乾燥気味にしておくのがよい。日当たりを好むが、真夏は直射日光を遮るものがあった方がよさそうだ。

 繁殖は挿し木が一般的で、3月下旬~6月あるいは8月下旬~9月が頃合いのようだ。挿し木用に切り取った枝は1日ほど乾かし、挿した後の水やりは1日後に行うのがよいそうだ。植え替えも、年一回くらいは行った方がよさそうだ。摘芯すると脇芽が出るので、その特性を利用すると形もよくなるという。

 ところで、挿し木として植えたわが家のゼラニウムだが、花房の形はアジサイに似て、その大きさは紙風船くらいにまで育ってきた。燃えるような朱色の花が、濃い緑の葉っぱを背にきらきらと輝いている。花びらはもとより、葉っぱにも備わったネルのような質感が、それらをいっそう引き立てている。

 やがて梅雨を過ぎ、真夏を迎えると、その朱色の花房はいっそう輝きを増した。5個にまで増えた大きな房たちは、あたりの木々が葉っぱを落とすころになっても、選手交代を重ねながら輝き続けた。そして、とうとう年を越してしまった。しかし、その艶やかな姿も、さすがに疲労の色は隠しきれなくなっている。

 ご近所でも、この花を垣根代わりにしているお宅を何軒も見かける。しかし、大抵茎が伸びすぎて、全体に勢いを失い花房も小さくて貧相なものが多い。やはり、こまめに摘芯や植え替えをしてやるなど、世代交代を促してやる必要がありそうだ。わが家のゼラニウムも、ここらあたりで摘芯をしてやり、春まで日だまりでゆっくりと休ませてやるつもりである。
(2019年1月8日)