年末年始の音楽番組

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[エッセイ 505]
年末年始の音楽番組

 年末から年始にかけてテレビ放送される大型の音楽番組といえば、レコード大賞紅白歌合戦それにウィーンフィルのニュー・イヤー・コンサートの3本だろう。この一年の音楽文化を総括し、新年の動向を占うに相応しい企画である。この時期だからこそ許される、娯楽性に富んだ長時間番組でもある。

 TBSのレコード大賞は、12月30日の夜、5時間半をかけて放送される。この1年間、国内で最も流行った“楽曲”が中心である。「レコード大賞」を頂点に新人賞など多種類の賞を設定し、その選考過程と結果発表を番組の骨格に据えている。賞は年々増え、いまでは15種類にも及んでいる。

 賞にまつわる楽曲は48曲、しかしその半分以上は初めて聞く歌である。歌手も半分近くが初めて接する名前であり顔である。世代交代がどんどん進み、時代の様相が急激に変化していることを実感させられる番組である。

 NHK総合紅白歌合戦は、12月31日の夜、4時間半をかけて放送される。この1年間、国内で最ももてはやされた“歌手またはグループ”を中心に編成される。もちろん、最近流行している曲も重要なファクターではあるが、どちらかというと番組の構成内容と歌手の代表曲に視点が置かれている。

 全44曲と、2回のインターバル、それに今回はフィナーレでも特別ゲストが招かれて番組に華を添えた。豪華な顔ぶれと衣装、そして目を見張るような舞台装置、NHKの総力を挙げての総決算的な大イベントである。

 NHKEテレのニュー・イヤー・コンサートは、元旦の夜、3時間をかけて放送される。クラシック音楽の中でも比較的気楽に聞けるワルツやポルカあるいは行進曲を中心に編成される。楽団はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、会場は楽友協会大ホールに固定されているが、指揮者は毎年交代する。

 黄金に彩られた豪華なホール、ふんだんに飾られた華やかな生花、聴衆は礼服やドレスに着飾って席に着く。新年に相応しい華やかで前向きな曲、アンコールを含め20曲、最後はラデツキー行進曲と観客の手拍子で新年を盛り上げる。

 普段、地デジの7つのチャンネルを追いかけるのがやっとで、音楽に接する機会はめっきり少なくなっている。極論すれば、週1回、NHKの「うたコン」くらいしかない。我々の音楽の知識はその範囲に限定されてしまっている。

 レコード大賞の5時間半は、異論はあるにしても1年分の遅れを一気に取り戻す貴重な機会である。紅白の4時間半は、1年分のストレスを発散させることのできるエンターテイメントの集大成である。そしてニュー・イヤー・コンサートは、教養の化けの皮が剥がれないように、しっかりと上塗りをする貴重なチャンスである。この3つ、今年もしっかりと楽しむことができた。
(2019年1月4日)


注)写真は紅白歌合戦ニューイヤーコンサートのテレビ画面から撮影