ジャズ

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[エッセイ 476]
ジャズ

 先日、近所の公民館ホールでジャズコンサートが開かれるというので出かけてみた。ヴァイオリン、ギター、それにベースの3人編成の楽団で演奏されたのが6曲、ピアノの独奏が8曲、最後に4人のジョイントセッションが2曲だった。都合2時間半の、懐かしさに満ちた楽しいひとときだった。

 まだ所帯を持つ前の1950年代後半から60年代前半にかけて、ジャズの生演奏をよく聴きに行った。お酒にはほとんど縁がなかったので、アフター5はもっぱら都心の大型ジャズ喫茶に出かけていた。銀座の美松にも何度か行った。その頃、まだ売れる前のハナ肇とクレージーキャッツがよく出演していた。

 所帯を持ってからは外で聴く機会はなく、もっぱらラジオやテレビで楽しむことになった。子供の情操教育ために買ったステレオでも、ドーナツ盤やLPレコードをよく聴いた。映画音楽やラテン音楽も良かったが、ジャズのあの独特のメロディーとリズムは、まだ若かった私たちを存分に酔わせてくれた。

 本物の演奏を本場で聴いたのは、それから30年以上も後の2001年になってからである。ニューヨークの、タイムズスクエアのすぐ近くにあるバードランドというライブハウスであった。秋吉敏子さんがご主人から引き継いだ秋吉敏子ジャズオーケストラの演奏だった。このときの体験は、2003年11月2日付のエッセー37号「ニューヨークのお宝」で一度紹介したことがある。

 そのジャズは、19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカの南部で生まれた。ルイジアナ州ミシシッピー河畔に位置するニューオリンズが発祥の地とされている。西洋音楽の技術と理論、それにアフリカ系アメリカ人の独特のリズム感が融合して生まれたといわれている。

 曲の系統は、デキシーランドジャズ、スイングジャズ、モダンジャズ、それにフリージャズなどに分類される。個人的には、モダンジャズの洒落たスタイルが大好きである。わが家のコレクションも、デイブ・ブルーベックの「テイクファイブ」やモダンジャズ・カルケットの「ジャンゴ」などが中心である。

 ジャズには、他の音楽にない大きな特徴がある。その一つは、四拍子の第二と第四拍にアクセントを置くオフビートと呼ばれる音調である。二つ目は、インプロビゼーションといわれる即興演奏が行われることである。そして三つ目は、演奏者の個性が強く出されることが好まれるという点である。

 それにしても、最近はジャズに接する機会がほとんどなくなった。日常生活の中にジャズが全くといっていいほど登場しない。テレビやラジオ番組を探しても見つけるのはかなり困難である。戦後、進駐軍とともにやってきて、30年近くも続いたあの隆盛はどこへ行ったしまったのだろう。
(2017年12月3日)

(注)上記のエッセー37号は、左上の小窓に「ニューヨークのお宝」と入れて検索いただければ簡単に見ることができます。