冷凍食品の半額セール

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[エッセイ 472]
冷凍食品の半額セール

 「日曜日は冷凍食品半額セールの日」などと呼ばれて、冷凍ショーケースの前は人だかりが絶えない。水曜日には、卵98円の日として朝から店先に長蛇の列ができる。この日は、近所のスーパーだけでなく、市内の多くの店が同じようなセールを一斉に展開する。

 その光景を見るたびに、いつも割り切れない気持ちにさせられる。別の日に、どうしても欲しいものがあるとき、不当に高いのを承知で買わなければならない。あるいは、こんなセールが毎週行われていること自体を知らない人は、騙まされていることさえ知らないまま高い買い物をしていることになる。

 こんな理不尽な商売が、それも一流といわれる大手企業の手によって堂々と行われている。それにもましておかしいのは、関係省庁が手をこまねいて傍観していることである。業者と役所が結託して、見て見ぬふりをしているとしか思えないような不思議な現象である。

 かつて、家電製品の小売市場は、二重価額問題で大きく揺れた。その反省から、「景品表示法」が制定され、市場の「不当表示」が厳しく監視されるようになった。不当表示とは、一般消費者に誤認を与える価額表示のことである。そして二重価額とは、商品やサービスを提供する際に、実際よりも著しく有利であると思わせる表示方法のことである。

 その具体例を、関係省庁のホームページから引用してみた。_氾点宿覆療稿価額について、競合店の平均価額から値引きすると表示しながら、その平均価額を実際よりも高い価額に設定し、そこから値引きを行っていた。眼鏡店で、フレーム+レンズ一式で「メーカー希望小売価額の半額」と表示したが、実際にはメーカー希望小売価額は設定されていなかった。

 ここで取り上げた冷凍食品は、実はオープン価額制でメーカー側は希望小売価額を定めていなかった。参考価額も、メーカーが目安として個別に店側に示しただけでカタログなどでの公表はしていなかった。つまり、基準となる価額は一般にはどこにも存在していなかったことになる。

 では、なぜいままで「半額」が通用したのだろうか。推測するに、基準となる価額は「当店通常店頭価額」にあるようだ。1週間のうちの6日間は、客が納得しようがしまいがあの不当に高い価額で売られていたのだ。これでは、監視側の役所も手が出せなかったのではなかろうか。

 それでも、役所が得意とする「行政指導」が功を奏したのだろうか、9月からあの半額セールが一斉に姿を消し、半額が通常店頭価額に姿を変えた。これで、残るは物価の優等生のはずの卵の二重価額問題である。
(2017年9月14日)