雨中のゴルフ

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[エッセイ 422]
雨中のゴルフ

 父の日の日曜日、全国的に荒れ模様になると予報されていた。北の強力な寒気が南下し、南から吹き込んでくる熱風と日本列島上空で梅雨前線を挟んでもみ合いになるのだという。このため、各地で局地的な雷雨や突風が発生すると予想されていた。もちろん、関東南部もその範ちゅうに入っていた。

 この日、ホームコースでは月例ゴルフコンペが予定されていた。普段、雨なら参加しないだけのことだが、この日は行きたい気持ちでうずうずしていた。先月のコンペで優勝でき、ハンデキャップが上がっていたにもかかわらず、また上位入賞ができるのではないかと強い期待感を抱いていたからである。

 さらには、本格的な雨のシーズンとなるこれからの1ヵ月間、プレーのチャンスがまったく巡ってこないかもしれない。真夏になれば、熱中症が怖くてとてもゴルフどころではないということにもなる。秋まで待つとなると、先月の参加から通算3ヵ月以上も空いてしまい次回の入賞資格が無くなってしまう。

 そしてもう一つ、クラブハウスの売店にキャディーバッグを注文してあった。こんなものは市中の店で買えばすむことだが、いきがかり上、売店からメーカーに特別に注文しもらったのだ。せっかく手配してもらったものを、何ヵ月も放置しておくわけにはいかない。やはり、プレーかたがた、早い機会に引き取りに行くのが一番自然ではなかろうか。

 そんなことを繰り返し考えているうちに夜は白々と明けてきた。テレビの天気予報は、朝になっても相変わらず大荒れを予報していた。それでも、空には薄雲が広がっている程度で、雨が降りだすような気配はなかった。それどころか、時折薄日が差すことさえあった。気持ちは、出かける方に固まった。

 駐車場の車の数は少なめだが、クラブハウスはいつものような賑わいをみせていた。アウトから順次スタートしていった。曇天ながら、3番ホールまでは淡々とプレーできた。お天気は案外持つかもしれない。そんな期待を抱きはじめた直後、ザーと大粒の雨が降りだした。急いでカッパを着こんだ。

 雨は降ったりやんだりを繰り返した。箱根の裾野部分なので、集中豪雨や雷が心配だったが、さいわいそれらは襲ってこなかった。水はけがいいせいだろうか、グリーンはもとよりフェアウェイにも水溜りができることもなかった。キャディさんの気遣いで、グリップが濡れてクラブが滑ることもなかった。

 カッパで身体が思うように動かない、雨でなんとなくいらいらさせられるなどということはあったが、がんばって最後まで廻りきることができた。この日、さすがにアンダーパーで上がった人はいなかった。私も、三匹目のドジョウを見つけることはついにかなわなかった。
(2015年6月22日)