スズメのコロニー

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[風を感じ、ときを想う日記](283)7/15
スズメのコロニー

 わが家の最寄りの駅前は、小さな広場になっている。それを取り巻く歩道と中央のロータリーには、ケヤキの大木が植えられている。駅の出入口の両側にも一本ずつあり、両方から通路を覆うように枝が伸びている。
 夕方になると、その茂みにスズメが集まってくる。彼女たちにしてみれば、帰ってくるといった方が当たっているかもしれない。その日のできごとをおしゃべりしあっているのだろうか、にぎやかなことこのうえもない。
 この日もたっぷりと餌を食べてきたのだろう、排泄の方もなかなかさかんなようである。枝の間から白いものが次々と落ちてくる。電車から降りてくる人の頭や洋服にかかることも珍しくない。

 ある日、とうとうそのケヤキの剪定作業が始まった。小さい枝はことごとく切り払われ、葉っぱをまばらに残すまでにされてしまった。空は明るくなり、あたりは静寂を取り戻した。これで、駅に出入りする人たちも一安心である。

 実は、このイタチごっこは毎年繰り返されている。春になり、裸の枝に葉っぱが芽吹く。やがて枝が伸びて茂みを作る。いつの間にかスズメたちがやってきてコロニーを形成する。人間がたまりかねてまた枝を切り払う。

 あたりにはいくらでも森があるのに、スズメもやっぱり駅前がいいのだろうか。