仙台OB会

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[エッセイ 248](新作)
仙台OB会

 かつて、仙台の支店に勤務したことのあるOBが、市内のホテルに集まった。地元に住んでいる人が14名、遠くから新幹線に乗って泊まりがけでやってきた人が16名、全部で30名が揃った。私にとっては28年ぶり、もちろんそれよりズーッと長い空白の時間を埋めに来た人もいた。

 地元在住の人たちは、いままでも親睦会で年一回程度は集まっていた。その席では、「あの人はどうしているだろう」「この人にも会ってみたい」などという話が必ず出たそうだ。それなら、いっそのこと全国に呼びかけようと、「仙台勤務当時を語る集い」という珠玉の時間を共有することになった。

 驚いたことに、全員が顔見知りであった。当時、一緒に仕事をしたことのある人が19名、あとはお世話になった人や仕事の上で連携してきた人たちであった。世間は狭いというが、それがこんなところにまで当てはまるとは・・。

 28年ぶりのはずなのに、なんでそれほど時間の経過を感じないのだろう。そういえば、仙台を離れた後も10年近くは出張で何度もこの地を訪れていた。そうはいっても、仕事で縁がなくなってはや17年が経つ。やはり、人と人とのつながりは、そう簡単に薄れていくものではないようだ。

 パーティーが終わった後も、話も名残も尽きそうになかった。場所を変え、カラオケに行こうと誘う人もいた。普段なら、それにホイホイ乗ったかもしれない。しかし、この日は会話の時間が少しでも多く欲しかった。結局、名残は居酒屋でたっぷりと惜しむことにした。

 私にとって仙台は、17年ぶりとはいっても実質的には28年ぶりである。会場は、タクシーを使えば10分もかからないところであるが、できることなら思い出の場所をゆっくりと回ってみたかった。私は、定刻より1時間半前に仙台に着き、探訪のぶらぶら歩きを始めた。

 仙台駅を出ると、まっすぐ延びる青葉通りを西に向かった。途中から、並行している中央通りへと足を踏み入れた。藤埼デパートの前を一番町通りに曲がると、今度は北に向かって歩を進めた。広瀬通りを横切ると、さらに西側の国分町通りに入り、まだネオンの灯っていない素顔の街を流してみた。
 
 一番町通りに戻り、それが終わる三越デパートの前で定禅寺通りを渡った。今度は方角を東にとり、勾当台公園を横切って宮城県庁の前をさらに進んだ。その先には、思い出の職場があるはずだ。しかし、その当時借りていたビルは取り壊され、跡には超高層マンションが建てられていた。

 寂しさを飲み込み会場のホテルに着いてみると、懐かしい顔ぶれはおおかた揃っていた。28年前は一気によみがえった。
(2009年6月30日)

写真:日曜日の一番町商店街