うどん

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f:id:yf-fujiwara:20220124170254j:plain[エッセイ 620]

うどん

 

 寒くなると、夕食には鍋物が喜ばれる。そしてその主役には、しばしば牡蠣が抜擢される。では、味付けはどうする。ここは、体の温まるキムチ味のスープなどどうだろう。キムチは、普段漬け物として毎日のようにいただいているが、この場合は鍋専用の市販のスープを使ってみるのも一興である。安直なわりに味もしっかりしており、納得いく値段で気軽に使えるのではなかろうか。

 

 そして、翌日のお昼には、残った鍋にうどんを入れていただく。なべ物にすると、どうしても量が多くなり、少人数の家庭ではかなりのものが残ってしまう。そこで、どのような料理にでも馴染むうどんを入れると絶品のキムチうどんができあがる。午前中、クラブ活動などで出かけてお昼ぎりぎりに帰ってくることがあるが、これだときわめて手軽に栄養豊かな昼食をいただくことができる。

 

 そのうどんは、米の代用食として日本で生まれ発展してきた。私自身も、学生時代にはおんぼろアパートで自炊生活をしていたが、生活費を使い果たし蓄えの米もなくなると、手持ちのメリケン粉でうどんを作ってしのいだ。添えるものなどなにもないので、調理方法と味付けの工夫だけが唯一の楽しみだった。いわば「うどん文化」も、そのような環境の中に育ってきたものではなかろうか。

 

 うどんは、小麦粉で打たれた麵のうち、長径1.7ミリ以上のものを指す。名古屋のきしめん甲府ほうとうもうどんである。それらより細い麵はひやむぎ、さらに細いのはそうめんと呼ばれる。麵の製法は大きく手打ちうどん手延べうどんに分けられる。調理前の商品として店頭に並べられるのは、ゆでうどん、生うどん、半生うどん、干しうどん、冷凍うどん、油揚げうどんなどである。

 

 うどんは、調理方法によって使われる容器も、丼、皿、ザル、鍋、桶、たらいなどと変ってくる。うどんは上に乗せる具によって呼び名も変る。きつね、たぬき、きざみ、月見、山かけ、とじ、天ぷら、力(ちから)、かやく、しっぽく、あんかけ、おだまき、カレー、鴨南ばん、かしわなんばん、肉・・・など。このほか、なべやき、みそにこみ、焼き・・・、ちゃんぽん焼き、・・・すき、あげ・・・、ほうとうきしめん、などなどである。

 

 こうしてみてくると、たかがうどんと思っていたものが、いかにバラエティに富んだものか、いかに汎用性に優れたものかということが分かる。下は一番簡単で安上りな素うどんから、上は乗せる具材の種類とグレード、さらには容器によっていくらでも高級料理に変身させることができる。うどんとは、世界一多様性のある、食べる人の好みと懐具合に合せられる変幻自在な料理である。

 

 私たちも、SDGsを頭の片隅において、いま捨てようとしていた野菜ぐずや魚の切れ端から高級うどん料理を生み出してみてはどうだろう。

                      (2022年1月24日 藤原吉弘)