スイカ

イメージ 1

[エッセイ 525]
イカ

 子供や孫たちが来てくれるというので、近所のスーパーにスイカを買いに行った。タイムサービスとやらで、展示台の上には大きなものがたくさん並べられていた。さっそく、NHKの人気番組「ガッテン」で習ったやり方で、店員の顔色を見ながら一つひとつ軽く叩いてみた。しかし、どれも同じように感じられ、特別うまそうなものを選び出すことはできなかった。

 このスイカは、ウリの仲間で、つる性の一年草である。野菜か果物かと聞かれれば果物と答えたくなるが、つる性であることから間違いなく野菜であろう。それでも、農水省の定義では「果実的野菜」と定められているそうだ。原産地はアフリカのサバンナ地帯で、日当たりと乾燥を好む。「西瓜」という漢字表記は中国語で、中国の西方から来た瓜ということに由来するようだ。

 日本へは室町時代のころ伝来し、全国に広まったのは江戸時代の後期だという。その頃のスイカには甘みはなかったようで、甘いスイカが登場したのは明治時代以降のこと、そしてそれが全国に普及したのは大正時代だそうだ。スイカには、メロンのように収穫した後も甘みが増すという「追熟」という現象はない。甘みは収穫時のままということなので、早目に食べた方がよさそうだ。

 日本では、スイカの種を食べる習慣はないが、世界的にはごく一般的なことのようだ。種には蛋白質や脂肪など、栄養分が豊富に含まれている。なお、種を飲み込むと盲腸炎になるといわれているが、根拠はまったくないそうだ。

 6月に、宮城県への家族旅行に出かけたとき、鳴子温泉から蔵王山までは山形県経由で向かった。尾花沢で国道13号線に入ったとき、40年前のことを思い出し、この国道の両側にはスイカ売りのスタンドが並び賑わっていたという話をした。事実、いまも山形県の生産量は全国3位であり、その大半は尾花沢で産出されているようだ。ちなみに、県別の1位は熊本県、2位は千葉県、農産物にしては珍しく、国産で100パーセントを占めている。

 ところで、どうしたら美味しい一品を選び出せるだろうか。見た目で判断するには、縞模様がくっきりしたもの、へたのまわりがへこんでいるもの、ツルがしなびていないもの、そしてお尻の部分が小さいものがいいそうだ。一方、音で判断するとしたら、ボンボンと鳴れば中はシャキイシャキ、ボタボタという音なら熟れすぎということになる。高く澄んだ音は果肉が詰まっている証拠である。「ガッテン」でいうとおり、若すぎると音は高いが振動は伝わらず、内部に空洞があれば振動が大きく減衰して反対側には伝わらないようだ。

 スイカは、日本を代表する夏の風物詩だが、季語は「秋」であり立秋以後が旬である。わが家で買ったあのスイカも、まさに旬の出来映えだった。
(2019年8月21日)