メジロ

イメージ 1

イメージ 2

[エッセイ 510]
メジロ

 今日も、メジロが数羽ツバキにやってきた。チーチーと、にぎやかに鳴き交わしながら花の蜜を吸っている。そこへ、大きな羽音とともにヒヨドリがやってきて、メジロたちを乱暴に追い払う。わが家の梅は遅咲きだが、咲き出すと同時に、そこでも同じドラマが繰り返されることになる。

 子供のころ、トリモチでメジロを捕まえ、鳥かごで飼っている家庭をよく見かけた。しかし、いまでは捕獲はもちろん飼育も原則禁止になっており、そんな光景を見かけることはない。それにかわって、庭のえさ台に二つ切りにしたみかんを置いて、メジロを呼び寄せている家を見かけることがある。

 そのメジロはスズメの仲間で、分類上はスズメ目メジロメジロ属となるそうだ。しかし、体長は12センチとスズメよりひとまわり小さく、国内ではミソサザイキクイタダキに次いで3番目に小さいそうだ。外見は、緑色に黒茶の混じったもので、昔からウグイスとよくまちがえられている。目のまわりは、その名のとおり白く縁取りされており、英語でも「white-eye」と呼ばれている。

 東アジアに広く分布し、日本では寒冷地をのぞく低地から山地まで広く生息している。留鳥だが、あちこち動き回る漂鳥でもある。花の密や果汁を主食にするが、花がなくなれば虫なども食べる雑食である。現に、冬は葦原で枯れ葉の影に潜む虫を食べる。別名を「はなすい」、「はなつゆ」などと呼ばれている。

 メジロというとすぐ「目白押し」を連想する。これは、夜、木の枝に止まって、群れ全体でかたまりになって寝る習性があることからきているようだ。夕暮れになると、かたまりの中心に我先に割り込もうとするそうだ。朝の通勤電車に、我先に乗り込もうとする光景とよく似ている。

 ところで、かつて目白といえば田中角栄といわれるくらい、その地名は全国にとどろいていた。あのあたりはメジロの繁殖地だったのだろうくらいに思われていた。そして、連鎖的に目黒の地名を思い浮かべる。こちらは落語のサンマで名をはせた。山手線をめぐってこの地名は果たしてどんな関係にあるのだろう。

 江戸三代家光の時代、慈眼大師が江戸を守るために5体の不動の像をつくった。目の色を、赤、黒、青、白そして黄の5色に色分けしたことから五色不動とよばれた。このなかで、目黒不動尊がとくに有名だが、一方の目白不動尊は、豊島区高田2丁目の真言宗金乗院に安置されているという。

 メジロとウグイスは、春告げ鳥としてよく混同される。メジロの濃い緑色をウグイス色という人までいる。ウグイスが、「声はすれども姿は見せない」ためであろう。ウグイスは、警戒心が強いだけでなく、自分の容姿に自信がもてないのかもしれない。やはり、声はウグイス、姿はメジロといったところだうか。
(2019年2月17日)