バナナ

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[エッセイ 492]
バナナ

 さきに、トウモロコシをおやつにいただいたとエッセーに書いた。おやつを題材に、エッセーでそこまで踏み込むなら、わが家の3時の主役であるバナナについて知らん顔をする訳にはいかないだろう。しかし、それは、すでに「バナナダイエット」というテーマで取り上げたことがある。そんなことから、今度はもう少し正面から取り組んでみることにした。

 わが家では、買い物のついでに小さな房を一つ求めてくる。それを、コーヒーのお供に2日~3日でいただく。そのほかの数日は、なるべく健康の負担にならない和菓子系をつまむ程度にいただく。ただ、なにかの都合で、保存中のバナナが黒ずんで傷みそうになったときは皮をむいて冷凍にしておく。後日、それに生卵と牛乳を加えてバナナジュースにする。

 今回の主役であるバナナの木は、バショウ科バショウ属の熱帯系大形多年草である。この植物は、木ではなく大形の「草」ということになる。一見、幹に見える部分は、「偽茎」といって葉鞘が重なったものだ。単純にいえば、ネギの白い部分を大きく堅くしたようなものらしい。その実は、草に実ることから、厳密に言うと果物ではなく「野菜」ということになるようだ。

 バナナの木は、日本語では「芭蕉」と呼ばれ、熱帯性植物でありながら昔から馴染みがあったようだ。辞書を開くと、実芭蕉とか甘蕉といった単語が出てくる。前者は実をつけるバナナのことで、後者はサトウキビのことだ。人名にも、松尾芭蕉などと俳人まで登場する。また、バナナの繊維で織られた芭蕉布と呼ばれる織物は、沖縄や奄美で古くから愛用されている。

 どうやら、この植物は本州などの温帯地方でも育つらしい。わが実家でも、母が植えたらしいものが大きく育っていたし、その近在でもたまに見かけることがあった。ただ、残念なことに実がついたのを見たことは一度もない。あの独特の姿形が日本の田園風景になじめず、実をつけることもないとしたら、その植栽は温室程度に留めておくのが望ましいのかもしれない。

 バナナの実は、低カロリーでありながら栄養バランスは抜群だそうだ。その効用は、むくみ予防、便秘解消、代謝促進、コレステロール値の引き下げなどにとくに顕著にみられるという。かくして、朝食は「バナナ+水」だけでダイエット効果が期待できるという、バナナダイエットの主張につながっていくようだ。

 私たちの子供のころは、バナナの輸入は大幅に制限されており、庶民はなかなか口にすることができなかった。そのわが幼少のころ、ただの一度だけ父がお土産に買ってきてくれたことがある。あのときの感動を思い出すにつけ、好きなだけ食べることのできるいまのご時世にあらためて感謝したい。
(2018年8月30日)