健康寿命

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[エッセイ 484]
健康寿命

 先に発表された厚生労働省の2016年の調査によると、日本人の健康寿命は、男性が72.14歳、女性が74.79歳だったそうだ。健康寿命とは、介護を受けたり寝たきりの状態にならず、自分の力で日常生活を送れる期間のことをいう。ちなみに、同じときの日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳だったそうだ。

 健康寿命と平均寿命の差は、健康でないこと、言い換えれば、寝たきりや介護を受けなければならない期間ということになる。このあまり嬉しくない期間は、男性が8.84年、女性が12.35年である。平均すると、10年前後が他人の世話にならなければならない期間である。本人にとってはまことに辛い、そして家族や社会にとってもあまりありがたくないときである。

 それでは、一体どうすればこの期間を縮められるか、いかにすれば“0”に近づけることができるかということが社会全体にとっての大きな課題である。その理想は、生涯現役、それも長生きしてなおかつ天に召されるときは“ポックリ”ということであろう。たとえば、聖路加病院の故日野原重明先生のごとくである。享年105歳、生涯現役を通し、最後は延命治療を拒否されたそうだ。

 それでは、私たち凡人は、この永遠の課題とどう向き合ったらいいだろう。生涯現役は無理としても、生涯社会参加くらいはなんとか貫き通したいものだ。社会参加とは、自分の力で社会と関わっていくこと、できれば少しでも地域社会のお役に立つことである。その関わり方や事の軽重は問わない。他人から、多少なりとも頼りにされるようになったらしめたものである。

 これらを達成するためには、それなりの体力が必要である。もちろん脳の働きも欠かすことはできない。今までの経験からいえば、足の力と脳の働きはほぼ連動している。そして、それらを活かすのがチャレンジ精神である。何事にも興味を持ち、やってみようとする前向きな気持ちであり、少しでも上を目指したいという向上心である。さらに、人間関係の維持に欠かせないのが気遣いである。

 脚力を鍛え、脳力をどう維持するか。ジムに通う、散歩に精を出す、膝が痛ければプールで歩く。将棋や麻雀、あるいは稽古事に精を出し、人間関係の維持と脳力の鍛錬に精を出す。これらのことを同時に満足できるのが、ウォーキングやグラウンドゴルフなど軽い運動を兼ねたサークル活動である。もちろん、体力に不安があるなら、歌や趣味のサークルでもその目的の多くの部分は達成できる。それらの能力を生かしたボランティア活動なら申し分あるまい。

 人それぞれ、自身の体力と脳力に合わせて前向きに取り組めばいい。平均寿命と健康寿命の差を縮めることこそ最大の社会貢献である。
(2018年3月25日)