スーパー・ブルー・ブラッド・ムーン

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[エッセイ 481]
スーパー・ブルー・ブラッド・ムーン

 報道各社は、昨夜は何十年に一度しかないようなスーパー・ブルー・ブラッド・ムーンと呼ばれるすごい天体ショーが繰り広げられると予告していた。たしかに、各地の天文台はもとより、東京スカイツリー六本木ヒルズの屋上など、見晴らしのいい場所には早くからたくさんの人が詰めかけていた。

 そんなにすごいものなら是非見てみたい。それなりに心の準備を整えて待つことにした。ただ、夕方からは全国的に雲が広がるので、その皆既月食が見られるかどうかは保証の限りではないとも付け加えられていた。おそらく、北海道の東側の一部と本州でも伊豆半島南端や御前崎など、ごく限られた場所でしか観察できないだろうということだった。

 すごいといってもたかが月食ではないか、とすっかり諦めて、夕食後はテレビの娯楽番組に夢中になっていた。午後9時のニュースが始まると、テレビキャスターが“スーパー・ブルー・ブラッド・ムーン”と語気を強めながら、各地の観察会の様子を伝え始めた。都内からは、月の欠けはじめた様子も伝えられてきた。あれ?雲がなくて月が見えているではないか!

 急いで雨戸を開けてみた。空には雲のかけらさえなく、月が煌々と輝いていた。満月のはずだが、すでに左半分が大きく欠けていた。欠けているといっても、その部分が全く見えなくなったわけではなく、うすい赤茶色に塗られた感じである。いま、その部分が刻々と広がり、光を放つ残りの三日月形がだんだん細くなっていった。そして、ついに赤銅色のお盆が夜空に浮かんだ。
 
 スーパー・ブルー・ブラッド・ムーン、アメリカのNASAアメリカ航空宇宙局)は、この皆既月食のことをそう呼んでいる。Superとは、月が地球の近くにあり、普段より大きく見えることをいう。Blueとは、色ではなく、満月が同じ月内に2回現れる場合の、2回目の月をそう呼ぶそうだ。確かに1月は、2日とこの31日に満月になった。Bloodとは、月が血の色のような赤銅色に染まることからそう呼ぶそうだ。影になった月が染まるのは、太陽光線の、波長の長い赤い光だけが地球の大気を通り抜けて、屈折して月に届くためだそうだ。

 この日、月が欠けていった時間帯は8:48~9:51、皆既月食の時間9:51~11:08、そしてもとにもどっていった時間帯は11:08~12:12だった。実に、3時間24分にもおよぶ大天体ショーだった。この日、日本でスーパー・ブルー・ブラッド・ムーンが見られたのは35年ぶり、アメリカでは150年ぶりになるそうだ。次に、日本でそれが見られるのは19年後の2037年1月31日だそうだ。

 お天気などの不確定要素もたくさんある。絶対に見られるという保証はどこにもない。まさに、一生に一度巡り会えるかどうかの貴重な機会だった。
(2018年2月1日)
 
写真:上は自分で撮った欠ける途中の写真―全くインスタ映えしていないので、NHKのテレビ画面から撮り直した―それが下の写真