三春の滝桜

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

[エッセイ 460]
三春の滝桜

 さくら見物は、開花の状況をよく確かめてから出かけるべきである。まして、やり直しのきかない旅行社のツアーならなおさらのことである。ある程度開花の見通しがたってから、ぎりぎりのところで申し込むべきである。ところが、そんな直前まで待っていたのでは、満席になって参加できなくなる恐れがある。

 今年は、福島県の「三春の滝桜」を見に行きたいと早くから考えていた。3月末になって、今年は4月中旬がよさそうだと判断し、インターネットで検索してみた。ところが、過去に何度か利用したことのある大手2社はすでに満杯だった。まさか!と思いながら、いろいろあたって見たがいずれも満員だった。

 やっと1社、4月16日からの1泊2日のコースが2名だけ空いていた。「三春の滝桜・花見山公園・鶴ヶ城公園・桜舞う会津鉄道春満開のふくしま10桜名所ハイライト2日間」という花見てんこ盛りのツアーだった。

 抜けるような青空の中、東北新幹線の「やまびこ」で、9時過ぎには新白河駅に降りたった。用意された大型観光バスは、旅行社のいう通り2台とも一つの空席もなかった。三春に向かう沿道のソメイヨシノはいずれも満開になっていたが、お目当てのベニシダレザクラは前日開花宣言が出たばかりだそうだ。

 そこは郡山市の東方、三春町の郊外に位置していた。滝桜は、丘の斜面にただ一本、春の日差しのなかに泰然と立っていた。高さ13.5m、幹回り8.1m、枝張りは14.5mという。とにかく大きい。樹齢は1000年を超すという。まだ5分咲きといったところだが、四方八方に広がった枝先からはピンクの花が群がるように垂れ下がっていた。まさに、滝が落ちるようであった。

 次は、福島市郊外、個人所有の花見山公園に向かった。百花繚乱、あるいは桃源郷とはこのようなことをいうのだろうか。山全体がサクラ、モモ、ウメなど濃淡の異なるピンク系の花に覆われ、そこにヒュウガミズキやレンギョウの黄色が割って入る。その際立った色のコントラストは見事としかいいようがない。

 2日目は、会津鶴ヶ城など7ヵ所の桜の名所を訪ねた。樹齢何百年といった桜の銘木が各所にあったが、いずれも一分や二分咲きといったところだった。それとは逆に、帰途立ち寄った白河城ソメイヨシノは満開を迎えていた。それを見たとたん、抑圧されていたものから一気に解放された思いであった。

 郡山や福島などの中通り地方と若松などの会津盆地では開花の状況が大きく異なっていた。また、花の種類によってもそれは大きくずれていた。かつて訪ねたことのある奈良の吉野山や青森の弘前城のときはうまく嚙み合っていた。しかし、今回は、複数の地域や種類の違う花を訪ねるときのタイミングの難しさをあらためて味あわされた。次は、もっと綿密に見極めて出かけたいものだ。
(2017年4月19日)

[写真]上:三春の滝桜、中:福島の花見山公園、下:白河城の桜、