ふぞろいどら焼き

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[エッセイ 458]
ふぞろいどら焼き

 近所の大型ドラッグストアで、特売品ワゴンに山積みされた和菓子を見かけることがある。「ふぞろいどら焼き」と小さく表示されている。みると、どら焼き風の小さな和菓子が7個封入されている。パッケージは簡素で、値段は200円弱に設定されており、いかにも半端物処分といった風情である。

 しかし、不揃いでも、食べられるものであればとくに差し支えはない。どら焼きは大好物なので、目につけば買って帰ることも多い。なんせ、先日達成したグラウンドゴルフのダイヤモンド賞のときも、どら焼きを内祝いとしてお配りしたくらいだから・・。ただこの時は、さすがに“ブランドもの”の高級品にした。

 ところで、半端ものだからそれほど多くは出回っていないだろうと思っていたところ、先月は近所のスーパーの目玉商品としてチラシにまで載せられた。あっという間に売り切れてしまったことはいうまでもない。また先日は、別のスーパーでもワゴンに山積みされており、手に取る人が次々と現れていた。

 「このキュウリは曲がっているので正規の販売ルートには乗せられませんが、味はまっすぐのものと何ら変わりはありません。それをご理解いただけるお客さまには特別の価額でお分けします」。つい最近までは、野菜の等外品処分と同じような解釈で、そのふぞろいどら焼きを買っていた。

 ここまで大量にかつ頻繁に出回っているところをみると、どこか不自然さを感じないわけにはいかない。曲がったキュウリと同じと考えていたのはこちらの勝手な解釈だったのではなかろうか。「ふぞろいどら焼き」はちゃんとした商品名であって、出来損ないの野菜と同列に考えてはならないのかもしれない。

 商品に貼られたシールをもう一度チェックしてみた。「商品名:ふぞろいどら焼き」と表示されてはいるが「ふぞろいの・・」とは書いてない。同社のホームページを開いてみた。商品情報として、「どら焼き5個入」、「カステラ7切れ」、「焼き饅頭8個入」、「栗まんじゅう8個入」、「切り出しカステラ260g」の5種とならんで「ふぞろいどら焼き7個入」が正規商品群の一角を占めていた。

 商品に貼られたシールには、末尾に「「この商品は形状が均一ではなく、生地に欠けた部分・こげの部分がある場合があります」と、“場合”があることが付け加えられていた。どうやら、「ふぞろい」をセールスポイントにはしたが、少なからず心が痛むのでその言い訳をしているとみられなくもない。

 それにしても、この「ふぞろい商法」、あえて傷物をセールスポイントにした商法といえよう。最近はあまり見かけなくなったやり方だが、ウェブにはそれを指摘する意見が多数投稿されている。私たちは、騙されたわけではないが、商品名には惑わされ、結果として家計の助けになったことは間違いないようだ。
(2017年3月17日)