花二題

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[風を感じ、ときを想う日記](766)9/29
花二題

 今年は雨にたたられ、行事まで重なって、なかなかそこまで足を運ぶことはできなかった。その名所に行くことができたのは、彼岸の中日から5日も過ぎた一昨日のことだった。それでも、期待のヒガンバナは、部分的に盛りを過ぎたものはあっても、全体としてはまだ十分観賞に耐えうる状態にあった。

 ヒガンバナは、小出川という田圃の中を流れる小川の両岸に、真っ赤な帯を四筋もつくって果てしなく伸びていた。その長さは、実に3キロにも及ぶという。川の上流側から西方向を見ると、富士山がくっきりと浮かんでみえるはずだった。しかし、この日は、霞がかかってそれを望むことはできなかった。

 その1日前だった。朝、雨戸をあけるといきなりあのふくよかな香りが鼻腔をくすぐってきた。この日、さっそく近所を歩いてみた。ほとんどのお宅の庭で、オレンジ色っぽい小さな房の群落を見つけることができた。どうやら、日本庭園の定番のようで、街中があのキンモクセイの香りに包まれていた。

 普段は、ほとんど注目されることのない地味な存在である。その樹皮は、名前の由来となった動物のサイの皮に似ているとかで、とても美しいとはいいがたい。葉っぱも常緑で艶やかではあるが、わざわざ観賞に値するようなものでもない。やはり彼等は、香りでその存在をアピールしているようである。

 美しさを見せるか、香りで勝負するか。花にも道は幾通りもあるようだ。