ヒマワリの首振り

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[エッセイ 447]
ヒマワリの首振り

 花の少なくなった夏・真っ盛り、ヒマワリだけは燦然と輝いて私たちを元気づけてくれる。あの黄色い大きな花は、一つの花のように見えるが、実は多数の花が集まって一つの花の形を形成している。外側の、花びらをつけた花を「舌状花」、内側の、花びらがない方の花を「筒状花」と呼ぶ。舌状花はおしべをもっていないが、筒状花はおしべとめしべの両方をもっているという。

 ヒマワリは、お日さまの動きにあわせて向きを変えるので、そう呼ばれるようになったといわれている。たしかに、朝は東を向いており、太陽の動きに合わせて徐々に西に向きを変えていく。そして、夜のうちにまた元の向きに戻り日の出を待つ。さすが、向日葵(ひまわり)や日輪草(にちりんそう)、あるいは日車(ひぐるま)などと呼ばれるだけのことはある。

 ところが、ヒマワリの花が太陽の動きに連動するのは、茎の柔らかいつぼみのときまでで、花が開いたら茎が硬くなり東を向いたままになる。私の見た限りでも、ヒマワリの花は概して東向きが多いが必ずしもそうとも限らない。同じ株でも、日当たりの具合によって花の向きは大きく違ってくるようだ。

 こんなことをいちいち理屈っぽくいわなくても、生き物のほとんどは太陽の方を向いて生きているはずである。その理屈っぽい話を、米カリフォルニア大の研究チームが実験で解明したという。以下は、8月5日付の米科学雑誌サイエンスに発表されたものとして紹介された8月7日の新聞記事である。

 ・・・ヒマワリは、昼は太陽光を受けて茎の東側の成長が速いために次第に西を向き、夜は体内時計の働きで茎に西側の成長が速くなって東向きに戻ることが分かった。夏至に近づくにつれて夜が短くなり、夜の成長がスピードアップするという。・・(中略)・・成長し終えて開花期になると、障害物がない開けた場所では首が東を向いたままになる。東向きだと花が東に太陽光を受けて早く温度が上がり、受粉を担うハチなどの虫がよく集まる効果があった。・・・

 そのヒマワリは、キク科の一年草である。原産は北アメリカ、それがスペインに持ち込まれ、後にフランス、ロシアを経由して1666年に日本に入ってきたという。日本では、観賞用や「迷路」として遊びなどにも利用されているが、その種はヒマワリ油のほか主に鳥類やリスなどのえさになっている。

 話をヒマワリの首振りに戻そう。その花が太陽の動きに連動するのは、茎の柔らかいつぼみのときまでで、花が開いたら茎が硬くなり東を向いたままになる。私たちも、加齢とともに身体はもとより心も考え方も固くなり、すべてにおいて柔軟性を失ってしまう。運動や読書あるいは仲間とのコミュニケーションなどによって、少しでも心身の柔軟性を維持していきたいものだ。
(2016年8月13日)