猫除け網

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[エッセイ 431]
猫除け網

 野良猫の所業には以前から手を焼いている。とくに、車の被害と家まわりへの糞尿には苦々しい思いをさせられてきた。車については、ボンネットや屋根に上がって寝そべるらしく、彼らが去った後には多数の足跡と無数の毛が残されている。とくに、雨の後は、その被害の大きさに愕然とさせられる。

 ただ、車については、車庫の周り三方を完全にふさいだことで一通りの解決をみた。彼らが、“袋のねずみ”になることを恐れたためではなかろうか。猫が車の上に寝そべっているとき、人などの外敵が正面から襲ってきたら、その敵に向かっていくしか逃げ道はないのだ。それ以来、猫は車にはほとんど寄り付かなくなった。残るは、糞尿の被害をいかに食い止めるかである。

 敷地内の軒下など、土がむき出しになっている場所には、遠慮会釈なく糞が放置されている。猫の習性から、その上に土が掛けられてはいるが、一目瞭然であり、尿も混じったその臭気は相当なものである。そこで、水の入ったペットボトルはもとより、レンガや板ギレなどを置いてみたが、広い面積を完全にカバーすることはできず、結局猫の思いのままにされてしまっていた。

 あるとき、町内の公園掃除の手伝いをしていて、砂場に目の粗い網が敷かれていることに気がついた。どうやら、猫がその砂場に糞尿を撒き散らさないようにするためらしい。砂場で遊ぶ子供たちに、衛生面からも気をつけてやろうということのようだ。このアイディア、我が家にもいただくことにした。

 さっそく、ホームセンターに出向き網を探した。鳥から作物を守るためのもの。タヌキやイノシシなどの侵入を防ぐためのもの。網の目の大きさや、網そのものの大きさなどその目的に合うよう各種取り揃えてあった。我が家では、幅60センチ、長さ5メートル、網の目は1.3センチ角のものを買ってきた。それを軒下に広げ、アンカーボルトで固定した。

 落ち葉などを掃き集めるのに、箒に引っかかって多少不便はあるが、猫よけ効果は抜群であった。以来、猫の被害には一度もあったことがない。ただ、彼らが糞尿をやめたわけではないので、我が家の代わりにどこか別の家が被害にあっているはずである。ちょっぴり心が痛まないでもないが、各自が自衛策をとる以外有効な手立てはないようだ。

 猫は、我が家でも飼ったことはあるが、なつけばなかなかかわいいものである。結構きれい好きで、トイレなどもしつければ粗相などめったにすることはない。それが、野良猫となるとどうしてこう憎たらしいのだろう。しかし、彼らには、生きていかなければならないという切羽詰まった事情もある。ここは本来の可愛さに免じて、こちらが自衛していくしかないようだ。
(2015年12月23日)