雪の恵み

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[エッセイ 390]
雪の恵み

 先週末、私たちは記録的な大雪に見舞われた。今週は、さらにそれを上回る大豪雪となった。人や車の事故、交通網の混乱、停電、建物の倒壊など被害も続出した。雪はまったくの邪魔者であり、場合によっては白い悪魔にもなる。

 その一方、ソチでは冬季オリンピックが開かれ、世界中の人たちが雪と氷の祭典を楽しんでいる。雪は、必ずしも憎まれ者や邪魔ものといわれるだけではなさそうだ。この小文では、あえて雪のいいところにスポットを当ててみた。

 その雪があるから、いろいろな冬のスポーツが楽しめる。競技とまではいかなくても、雪合戦で遊ぶこともできる。雪だるまやかまくらを作ってはしゃぐのも楽しい。高齢者にだって、杯片手に雪見酒としゃれこむ楽しさもある。雪は、汚いものをすべて覆い隠し、美しく見せる特技をもっている。

 景観を楽しむという点では、雪は観光の立派な、そして貴重な資源である。富士山やアルプスは雪をかぶっているからこそ美しく、その景観は写真や観光の絶好の対象となる。スキーツアーや雪像が競う雪まつりを目当てに、冬の北海道を訪れる南の国からの外人観光客も急増中だと聞いている。

 雪は天然のダムである。冬場に、山に積もった雪がゆっくりと溶けて麓に至る。時間をかけて流れ下った水はとくに美味しい。そこでとれるコメもまたうまい。それらをもとにつくられるお酒はなおさら美味い。そういえば、毎年問題になる夏場の渇水の話を、雪国では聞いたことがない。

 雪解け水はもちろん発電などの自然エネルギーとしても活用される。雪室に蓄えられた雪は、夏場の冷房エネルギーとして活用することもできる。もちろん、雪室に蓄えられた食品は、じっくりと熟成されて旨さがいっそう増すという。またそこに蓄えられた雪は、それ自体も夏場のかき氷として珍重される。

 雪洞は結構暖かいと聞く。イグルーと呼ばれるエスキモーの雪と氷で造られた住居は、まさに住空間として利用されている。うっかりするところだったが、雪は交通の邪魔になるだけでなく交通の助けにもなる。そり、スキー、トロイカ、そしてスノーモービルは、便利で快適な雪上の交通手段である。

 物事、すべからく長短があり裏表がある。雪が降れば、犬は喜び、子供ははしゃぐ。それでも大人は渋い顔をする。東海道新幹線小雪でもすぐ遅れを出すが、東北・上越新幹線は少々の雪ではびくともしない。しょせん避けえない自然現象ではあるが、心がけひとつで結果は左右に大きく分かれてしまう。

 雪をマイナスと考えるかプラスと捉えるか、悪魔と見るか天の恵みと受け止めるか。その考え方と対応の仕方によって、私たちの生活のありようもまた大きく左右される。それにしても、豪雪の後の雪かきはやっぱり難儀なものだ。
(2014年2月15日)