竹富島

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

[エッセイ 501]
竹富島

 ここ竹富島(たけとみじま)は、石垣島から高速の双胴船で約10分の距離にある。船は竹富東港という桟橋に着いたが、あたりに町らしいものは見当たらない。バスで10分くらい走ったところで、やっとその中心部に着いた。ここでは、伝統的な民家の町並みを、水牛車に乗って見物するのが目的である。

 観光センターで、赤い屋根の付いた乗り合いの水牛車に案内された。水牛車は、由布島とちがって陸上専用の四輪車である。そのため、車輪の径も小さい。水牛車の観光は、民宿が砂浜への送迎サービスで始めたのがきっかけだそうだ。通常料金は1,200円、町内ひとまわりの所要時間は約30分である。

 10人ばかりが乗った水牛車は、御者に促されて町中へ向けてゆっくりと歩き始めた。牛は、ときどき立ち止まって動かなくなる。御者に機嫌をとられ、尻を叩かれるとまた動き出す。のろいわりに、狭いコーナーは、内輪差まで考えてきれいに曲がる。御者は、案内の傍ら三線の演奏で客をもてなす。

 路地は、白い砂の敷き詰められた幅4メートルばかりの細い道である。道の両側には高さ1.5メートルほどの石灰岩の塀が並ぶ。塀は、拾ってきた石を積み上げただけで、鉄筋の補強などはしていないそうだ。敷地は各戸約200坪で、門と家の間には、魔除けと目隠しを兼ねたヤマカシという小さな塀がある。

 屋敷の中には、平屋の母屋とその西側に炊事棟が配置されている。屋根は赤瓦葺きで、漆喰で目止めされ、その上に魔除けのシーサーが乗せられている。外壁や雨戸は板で、黒っぽい落ち着いた色に塗られている。屋敷内には、ハイビスカスやブーゲンビリアなどが植えられ、美しい花を塀の外にのぞかせている。

 この町並みは、1987年に重要伝統的建造物群保存地区に指定された。その原点は、1986年に原型が整えられた竹富島憲章と呼ばれる住民同士の約束事である。以降、改訂を重ねて伝統的な町の景観を守ってきた。このため、島外からの進出は厳しく制限されているが、H社はそれらをすべてクリアし、この島に自然に溶け込んだようなリゾート施設を作り上げた。テレビでしか見たことはないが、まさに適応のための工夫の塊のようなホテルである。

 竹富島珊瑚礁の隆起によってできた島である。住所は八重山郡竹富町だが、町役場は石垣市に置かれている。島の面積は5.4平方キロ、最高地点の標高は1.9メートル、定住人口は350人、水牛は13頭、観光客は年間約47万人である。中心部の伝統的な建物は113戸でいずれも人が住んでいる。

 住民たちは、この美しい環境を維持するために多くの犠牲を払っているにちがいない。もちろん、日常生活に於いても、相当の制約と不便をかこっているのではなかろうか。住民の方々はもとより、関係者のみなさんに敬意を表したい。
(2018年11月20日)