スーパームーン

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[エッセイ 426]
スーパームーン

 昨、9月28日夜の月は十六夜に当たっていた。“いざよい”とは、十五夜の名月が曇天で十分楽しむことができなかったときの予備日として、とくにそう呼ばれるようになったものである。ところが、昨夜の月は“予備の月”どころか“スーパームーン”とさえ呼ばれ、特別にもてはやされていた。その根拠は、今年3月16日の、一番小さく見えたときの満月に比べ、直径で1.14倍、明るさで1.3倍にも見えていたためだ。

 月は、およそ28日周期で地球の周りをまわっている。ただ、その周回コースは円ではなく楕円である。地球から一番近いところは35万7千キロ、一番遠いところは40万6千キロだそうだ。その楕円形の軌道上で、月が最も地球に近づいた時の満月が最も大きく明るく見えるわけである。その条件に合うのは、月と地球と太陽が直線状に並び、しかも月が地球に最も近づいた時である。その頻度は、411.8日毎、満月の回数にして14回目毎に表れるそうだ。

 ところで、今回のスーパームーンは、27日の十五夜でなく28日の十六夜になったのはなぜだろう。実は、これも楕円形の軌道がなせる技だそうで、完全な満月が十五夜から1日や2日ずれるのはざらにあることだそうだ。もう一つ疑問があった。月はいつも同じ面を地球に向け、裏側を見せたことがないのはなぜだろう。これは、月の重力が中心からずれており、その重力が表面に片寄っている部分が引力によって地球の方に向かされているのだそうだ。

 それはそうと、月見はやはり中秋の名月にかぎる。中秋とは陰暦の8月15日のことである。陰暦では、7月から9月までの3ヵ月間を秋としているので、その日がちょうど季節の中間に当たる。月が満ち始める日を、陰暦ではその月の初日としており、15日には満月となる。本来、月の美しさに変わりはないはずだが、秋は月の出る時刻、月を見上げる目線の角度、さらには空気の澄み具合など、月を鑑賞するのに最適の季節であるためだ。

 27日の夜、さっそく外に出てススキを探して歩いた。名月の写真を撮りたいが、私のカメラではなにか添え物がないと絵にならないためだ。やっと見つけたら、月に雲がかかってシャッターチャンスまでずいぶん待たされてしまった。28日の夜、今度はスーパームーンを撮ろうと思ったが、もう遠くまで行く元気がなく、昨年同様帆船の置物でご勘弁いただくことにした。

 一夜明け、写真撮影の成果を点検してみた。十五夜の満月は手ぶれ×ピンボケ、そしてスーパームーンは添え物ばかりが目立っていた。
(2015年9月29日)