突発性難聴

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[エッセイ 402]
突発性難聴

 朝、起きぬけにトイレへ行ったら、あのいやな症状が表れていた。左の耳が塞がれたようで、その奥ではウーンという低い音が響いている。今までに何度も経験した耳閉感と耳鳴りである。部屋ではテレビの音に邪魔されて感じなかったが、周囲を遮蔽された静かなトイレではそれがはっきりとわかる。

 その日、朝のうちに近所の耳鼻科へ行った。現役で活躍しているころ、よく突発性難聴でお世話になったお医者さんである。およそ10年ぶりだが、あのいやな感覚だけは忘れようがない。さっそく聴力を測ってもらった。しかし、それほど落ちてはいなかった。今回は、それの軽度のものと診断された。

 医師は3種類の薬を処方してくれた。メチコバール錠、アデホスコーワ顆粒、それにイソバイドシロップである。最初の錠剤は末梢神経の障害を改善する薬であり、2つ目の散剤と3つ目の液剤はめまいに用いる薬だそうだ。久しぶりに手にすることになったが、もとはおなじみの薬である。

 これらの薬には、本当によく世話になった。あの頃、朝起きるとよくあのいやな症状が出ていた。その都度すぐその耳鼻科に駆けこんだ。最初に罹ったとき、「早く来てよかった。2日経って改善しなければ、入院させるところだった」といわれた。あまりにもよく通ったので、常備薬を置いたほうがいいと勧められ、イソバイドの予備を冷蔵庫に保管するようにした。

 その突発性難聴という耳の病気は、耳閉感と耳鳴りを伴う感音性の難聴である。厚生労働省特定疾患に指定されている難病である。あるとき、突然片耳に発症する。何時何分と特定できるほど発症したときがはっきりしているという。その瞬間強いめまいを覚える人も多いという。ただ、私の場合はいつも寝ているときに発症するため、その瞬間の記憶は全くない。

 発症の原因は、ウイルスの仕業らしいといわれたり、血流が不十分なために起こる機能不全だといわれたりしているが未だ解明されていない。第三の原因としてストレスを挙げる人も多い。原因がよくわからないとすぐストレスのせいにするが、私の場合も医師からそれが原因ではないかといわれた。現役引退以降、ストレスは確実に減っているので、本当にそうかもしれない。

 診察は、医師の問診と純音聴力検査が主体となる。その治療は、2~3日が勝負だそうだ。それも安静が一番だという。1週間以上、2週間も経つと完治は難しくなるという。治療薬は先にも紹介したが、ステロイド剤、血流改善剤、それに代謝促進剤の併用が一般的のようだ。

 耳の健康は自分にしかわからない。これからも、極力ストレスを避けて、耳も目も大切にしていくつもりである。
(2014年7月27日)