MRI

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[エッセイ 414]
MRI

 その耳鼻科の医師は、私がたびたび突発性難聴を発症するので、脳になにか原因があるかもしれないと疑ったようだ。医師は、一度見てもらってほしいといって、親交のあるという脳神経外科病院を紹介してくれた。

 さっそく、その病院のMRIを予約しようとしたら、まず総合的に診断したいので外来に来てほしいといわれた。朝から待つこと1時間半、やっと医師の問診を受け、つづいてMRIの検査を受けることになった。ただ、この装置は予約でいっぱいなので、私の順番はさらに2時間後になるということだった。

 腹の虫がグーグー鳴き出したころ、やっとお呼びがかかった。検診台に寝かされ、頭部からゆっくりと大きなドラムの中に入れられていく。やがて、ガガガガという工事現場のような大きな音が響きだした。瞼を閉じていたら、いつの間にかうとうとしていたらしく、あっという間に30分が過ぎていた。

 このMRIとは、強力な磁石でできた筒の中に人を入れ、磁気の力を利用して生体内の情報を画像化する検査方法である。英語ではMagnetic Resonance Imaging、日本語では磁気共鳴画像法と呼ばれている。人の体内にある水素原子核は、磁気に共鳴して微弱な電波を発生する。その核磁気共鳴現象とよばれる体内の情報を電波で受信し、解析してコンピュータで画像化するのだそうだ。

 脳、脊椎、四肢、子宮、卵巣、前立腺など骨盤腔に生じた病変あるいは血管などに優れた描出能力があるという。平面や断層写真はもとより、三次元画像もお手のものである。MRIは、X線撮影やCT(Computed Tomography)のようなX線は使わないので、被爆による副作用の心配はもちろんない。

 MRIは、磁気を主要媒体として使うので、生体以外に磁気に反応するものを装着していると、データはもちろん生体にも悪影響があるそうだ。心臓ペースメーカーや補聴器、身体に埋め込まれた金属性の歯やボルト類はもとより、刺青や化粧品にも一部これに該当するものがあるという。

 この装置には、とりたてて大きな欠点は見当たらないようだ。ただ、非常に狭い空間での受診となるので、閉所恐怖症の人には厳しい試練となる。また、工事現場のような大きな音がするので、それなりの心づもりが必要である。さらには、高価な装置なので、それ相応の受診料も覚悟しなければならない。

 私の検査結果を受けた医師の所見は、特に病変らしいものは見当たらない、まあ、大丈夫でしょう!ということだった。ただ、脳は年齢相応に委縮が進んでいると告げられ、それなりにショックを受けたことはいうまでもない。

 この日は、長時間にわたって心身ともに大きな負荷を受けた。それでも、安心料を払ったのだと納得し、それ以上の安らぎに満足しているところである。
(2015年2月19日)