網戸のあるくらし

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[エッセイ 374]
網戸のあるくらし

 網戸の張り替えをした。しかし、全部の網戸ではなく、傷んでいるものだけを張り替えた。しかも、中央に横桟があって、上下どちらか片方だけ補修すれば間に合うようなものはその部分だけにとどめた。いずれにしても、これで大っぴらに新鮮な外気を取り入れることができる。

 子供のころ、普通の家庭にはこんな気の利いた備えはなかった。部屋に風を入れようとすれば、雨戸や障子を開け放つしかない。開ければ、風は入るが同時に蚊やハエ、夜になると蛾やこがね虫などの昆虫も出入り自由となった。昼間はハエ捕り紙、夜には蚊取り線香と蚊帳が必需品だった。

 昭和四十年代の初め、公団住宅に入ることができた。入居手続きに出向いた管理事務所の前では、風呂の手桶や物干し竿など団地生活に必要な各種用具が売られていた。その中に木枠の網戸もあった。こんな便利なものがあるのだ!さっそく、南側の大きいものと、北側の小さいものの2枚を買い求めた。

 部屋は、5階建ての4階の部屋が割り当てられた。建物の配置の都合から、南北ともに邪魔な建物はなかった。見晴らし、風通し抜群、おまけに覗かれる心配もなかった。網戸のある夏の団地暮らしは快適そのものだった。

 いまの戸建て住宅に移ったころには、全部の窓にアルミサッシの網戸が標準装備されるようになっていた。さらに、エアコンが急速に普及し始め、その網戸さえ活躍する機会が減っていた。それでも、いまも春秋を中心に、気候のいい時期には網戸は欠かすことのできない必需品である。

 傷んだ網戸の張り替えには、あらかじめ次の4点を用意しておく必要がある。ロール状に巻かれたプラスチックの網、網を固定するためのゴム紐、そのゴムを溝に押し込むためのローラー、それにカッターナイフである。

 きれいに清掃したサッシを、外側を上にして平らな所に置く。その上にプラスチック網を広げ位置を決める。溝の角の部分にゴム紐の端を押し込み、そこから先はローラーで押し込んでいく。仕上げに、プラスチック網の溝からはみ出した部分をカッターナイフで切り取る。

 ゴムひもは、溝より二回りくらい大きいものを選ぶのがポイントだ。細くてゆるいと溝から外れてしまい、逆にあまり太いと溝に押し込めない。ローラーは、鉄道の車輪と同じ形をしているので、フランジ部分が内側にくるように使うといい。網を真っすぐ、ピンと張ることができる。

 業者に頼むと最低でも1枚2千円はかかるが、DIYで部品を買い揃え、自分で張り替えれば数百円ですむ。エアコンがフル回転する時節でも、一日に一回くらいは網戸にして、家中の空気を新鮮なものに入れ替えたいものだ。
(2013年7月19日)