カーネーション

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[エッセイ 344]
カーネーション
 
 5月の第2日曜日は母の日、母の日といえばカーネーションが定番である。ところが、このキーワードをインターネットで検索すると、昨年の秋ごろから花そのものではなく、NHKの朝ドラの記事が目立つようになった。そしてその記事も、今年前半あたりからは、ヒロイン役をなぜ交代されるのだという抗議の投稿に置き換わっていった。

 朝ドラ「カーネーション」は、コシノ3姉妹を育て上げた小篠綾子の、実話に基づくフィクションストーリーである。カーネーションというタイトルは、主人公の一番好きな花にあやかってつけられたものだという。成人して以降のヒロイン役を、尾野真千子が個性豊かに演じ大変好評だった。その抗議の声は、主役の晩年を夏木マリに交代させたためにあがったものだ。

 主題を花に戻そう。いま、わが家のリビングルームにも赤とピンクの2色のカーネーションの鉢植えが飾られている。もちろん子供たちから贈られたものだ。カーネーションと母の日の関係は1905~7年頃までさかのぼる。アメリカのアンナ・ジャービスという人が、自分の母を偲んで教会でカーネーションを捧げ、訪れた人にも手渡したのが始まりだといわれている。

 その母の日は、アメリカで1914年に初めて5月の第2日曜日と定められた。日本でも、1949年にそれに倣って同じ日に定められた。現在、この日を母の日とする国は、日本、アメリカなど30カ国近くに上る。5月第1日曜日が6カ国、5月最終日曜日が6カ国などその大半が5月に集中している。

 カーネーションナデシコ科の多年草である。原産地は南ヨーロッパから西アジア方面である。日本には、江戸時代の初期に伝えられたという。しかし、日本での栽培は明治になってもなかなか定着しなかった。大正以降、ガラスの温室が普及するようになってやっと本格的になったという。

 現在、カーネーションはキクやバラと並んで生産高上位の花卉植物である。ハウス栽培で年間を通して安定的に供給されている。もっとも、需要のピークは母の日の5月に大きな山がある。切り花のイメージが強いが、最近では鉢植えもかなり普及してきた。現にわが家に飾られているものもそれである。カーネーションの市町村別生産額の日本一は、愛知県の西尾市だそうだ。

 カーネーションの語源は、冠飾の花という意味のcoronation flowerが変化したものというのが定説になっている。花言葉は、あらゆる試練に耐えた誠実、良き競争相手、純粋な愛情、貞節、若い娘、感覚、感動、といったところだ。

 花を贈りたい母はすでにこの世にはいない。せめて子供たちに贈られたカーネーションだけでも、家内を助けて大切に育てていきたいと思っている。
(2012年5月14日)