小宴前ウォーキング

イメージ 1

[エッセイ 328]
小宴前ウォーキング

 グラウンドゴルフで集まったとき、小グループのウォーキングに誘われた。翌々日の午後、市内北部の田園地帯をぶらつく予定だという。午後ということにちょっと違和感があったが、その日の午前中は予定があったので私にとってはかえって好都合だった。

 午後1時ちょうど、小田急江ノ島線長後駅に降り立った。集まったのは9人だった。西口に出て、“の”の字形に周辺を歩く予定だという。住宅街の、曲がりくねった細い路地を抜けると、目の前に里山の原風景が広がっていた。

 永明寺という立派なお寺に立ち寄った私たちは、誘われるようにあぜ道を引地川へと導かれていった。ふたたび台地に戻り、鐘楼の備えられた天神様で休憩をとった。心配していたトイレも気持ちよく使うことができた。小田急線の反対側低地には境川が南北に流れていた。土手に造られたサイクリングロードでは、自転車に気を取られながらも解放感に満ちた散策ができた。最終目的地の七ッ木神社を経て、のの字のしっぽにあたる湘南台駅へと向かった。

 総勢は9人だったが、なんとなく2~3人ずつのグループに分かれて歩いた。その組み合わせが、道々で自然に入れ変わっていく。会話の内容も、場所や顔ぶれの変化に応じてどんどん変わっていった。お寺ではお墓の用意はできたかと問い、引地川で鯉が泳いでいるのを見かけると川魚料理の話に花が咲いた。境川の土手では源流はどこだろうと聞かれ、神社では鳥居のスタイルにまで話がおよんだ。

 宴席などの場合、周囲の人としか交流できず、話題もおのずから限定されてしまうことが多い。それに引きかえ、こうして青空のもとで場所を変えパートナーを変えて向き合えば、名実ともに幅広い交流ができる。しかも、裸に近い本音の交流が可能である。道の悪いところでは仲間の足元を気遣い、遅れかけた人がいると歩みを止めて追いつくのを待つ。お互いのコミュニケーションも、きわめて自然に形成されていく。

 2時間半ばかり歩いて湘南台の駅前に出た。これから善行の居酒屋へ行っても、全員が入れるかどうかわからない。3時からやっている店は小さいので、すぐいっぱいになってしまうおそれがある。やむなく、湘南台駅前で居酒屋を探した。しかし、たいていが5時オープンで、開いている店はなかった。みると、チェーン展開の餃子屋があった。悪くないと9人全員が陣取った。

 なるほど、午後の小宴前ウォーキングにはこんな利点があったのだ。青空のもとでコミュニケーションを形成し、グラス片手にノミニケーションで仕上げれば、友達の輪はいっそう厚く大きく広がるというものだ。
(2011年11月21日)