ブラジリアと世界文化遺産

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[エッセイ 316]
ブラジリアと世界文化遺産

 知り合いのご子息が、ブラジルの首都・ブラジリアから転勤で家族そろって帰国された。そのご子息は、彼の地に5年間勤務されたが、このたび東京の勤務にかわったのだそうだ。

 その話題の中で、私はブラジリアが世界文化遺産に登録されていることを知った。そのとき私は、そんな新しい町が世界遺産になるはずがないとにわかには信じなかった。私の記憶では、ブラジリアは人工的に作られた新しい都市で、完成後まだ半世紀くらいしか経っていないはずなのだ。

 帰宅後、あれこれ調べてみたら、ブラジリアは間違いなく世界文化遺産に登録されていた。それも、もう20年以上も前のことである。日本には12の世界文化遺産があるが、原爆ドームを除く11カ所はすべて何百年も経過した古いものばかりである。どうやら、この登録は異例中の異例のようだ。

 ブラジリアは、ブラジルの内陸部開発のために造られた新しい首都である。この町は、標高1100メートルの未開の高原に拓かれた人工都市である。元の首都リオデジャネイロやブラジル最大の都市サンパウロなどの沿岸部からは1000キロ以上も離れている。
 
 新首都の建設は、1956年に新しく就任した大統領のもとで決定された。工事は、4年の大統領任期中の完成を目指して急ピッチで進められた。計画どおり1960年に完成し、即遷都が行われた。工事期間はわずか41カ月だった。

 市街は、人造湖・バラノア湖のほとり、それに向けて飛行機が翼を広げたような形に造られた。機首の部分には国会議事堂、各行政庁舎、それに最高裁判所が、翼の部分には各国大使館と高層住宅が配置されている。建造物は、いずれも斬新なデザインの未来を空想させるものばかりである。

 他の主要都市とは航空機と長距離バスで結ばれており、鉄道は敷設されていないようだ。ただ、周辺に大きな産業がないため外国との直行便はほとんど運行されていないという。現在の人口は約200万人である。

 世界文化遺産には、次のような基準を満たしているとして登録されたという。1987年、町が出来てわずか37年後のことである。
 /洋爐料和づ天才の傑作を表現するもの。
 ⊃洋爐領鮖望綵斗廚併?紊鯲秕擇垢襪△觀措阿侶暲な、建築物群、技術の集積、または景観の顕著な例。

 ブラジルは、この世紀の大事業によって大きな財政負担を背負い込み、長くその処理に苦しんだという。ただ、これがバネとなって、この国をBRICs新興国群の一角を占めさせるまでに飛躍させたことは間違いあるまい。
(2011年7月21日)