八月の風

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[風を感じ、ときを想う日記](914)8/7
八月の風

 今月の「ゆうゆう通信」には、巻頭の挨拶として次のような小文を載せた。
 
 ・・・暑いときは、着るものも食べるものも、すべからく簡素なものが好まれます。その暑い夏に話題に上るのが薪能です。これこそシンプルの極みといっていいでしょう。舞台は簡素。大道具も小道具も、照明さえもほとんどない。幕ももちろんない。BGMも太鼓、鼓、笛、それに数人の地謡が静かに流れるだけ。演者も僅かな数に絞られています。

 演技も、「静」と「間」が基本となり、観る側の感性によって創り上げていくことになるようです。現存する芸能のうち、このように700年も続いたものは世界に例がないといいます。その価値が認められ、能はユネスコの世界無形文化遺産に登録されています。

 薪能のようなシンプルな世界こそ、猛暑を乗り切る究極の裏技かもしれませんね。・・・
 
 7月最後の日曜日だった。夜9時になったので、いつものようにNHKEテレにチャンネルを廻した。音楽ではなく、薪能が始まった。京都の平安神宮の前庭が舞台だった。最初は、まだ明るい時間帯だったので、あの朱色に塗られた竜宮城のような社殿がバックに現われた。ちょっと違和感があったが、それはそれで十分楽しめた。そのうちあたりが暗くなり、本来の薪能の雰囲気が出てきた。

 テレビで見ていても、知らずしらず幽玄の世界に引き込まれていった。