一陽来復

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[エッセイ 298]
一陽来復

 昨日の夕食にはカボチャの煮ものが用意され、就寝前に使う浴槽にはユズが浮かべられていた。そして今日、午前の紅茶にはユズのマーマレードが加えられていた。もちろん、昨22日の冬至にちなんでのことである。

 冬至にカボチャを食べる習慣はずいぶん昔からあったようだ。野菜の不足する冬場に、ビタミン類を補給するのにもっとも手頃な保存食だったのだろう。冬至にカボチャを食べると中気にかからないといわれ、カボチャは金運につながるともてはやされもした。

 ゆず湯は冬の季語にもなっているが、もとは一陽来復(いちようらいふく)にむけての禊(みそぎ)の意味があったようだ。冬至にゆず湯に入る習慣が一般化したのは、銭湯が登場して以来だというから、庶民にとってはそれほど古い話ではなさそうだ。ゆず湯は下から読んでもユズユ、柚子(ゆず)は融通に、冬至は湯治に通じることから、しゃれ好きの銭湯のオヤジが商売繁盛のために始めたものかもしれない。

 ゆず湯は血行促進効果が高く、風邪の予防はもとより、冷え性や神経痛あるいは腰痛を和らげる効能もあるとされている。もちろん、ヒビやアカギレの治療に優れ、果皮には美肌効果があることも古くからよく知られている。

 ゆず湯のもとになるユズは、大きく分けて2種類あるそうだ。実の大きいのがホンユズ、実の小さい種類がハナユズと呼ばれている。病気に強く栽培は楽だが、成長が遅くタネから育てると結実まで10年はかかるという。「桃栗三年・・」などといわれるが、その最後には「柚子の大バカ十八年」がくるそうだ。それでもゆず湯のお陰だろうか、花言葉は「健康美」だそうだ。

 二十四節季でいう冬至は、日の出、日の入りの位置が一年でもっとも南寄りになる日、太陽の高さが一番低い日である。その結果、一年で最も昼間の短い日ということになる。もっとも、日の出が最も遅く、日の入りが最も早いわけではない。日の出が最も遅いのは冬至より半月くらい後、日の入りが最も早いのは冬至より半月くらい前になる。

 一日の昼間の長さは、夏至を起点に少しずつ短くなっていき冬至の日にその底を迎える。この日を境に、昼間の時間はまた少しずつ長くなっていく。いわば、冬至は陰から陽へと変わる転換点となるわけだ。このため、一年の起点をこの日と考えることも多いという。

 冬至を迎えても、「冬至冬中冬初め(とうじふゆなかふゆはじめ)」といわれるように、これからが本格的な冬となる。一方、「一陽来復」ともいわれるように、運気は陰から陽へと向きを変えてどんどん上向いていく。
(2010年12月23日)